「イルカ。そろそろ起きなさい」
優しい声がする。
「ん。母ちゃん、もうちょっと……」
暖かい布団が心地よくて、もう少しだけと強請ってみる。
「駄目よ。待っている人がいるんだから、早く起きなさい。いつまでもここで寝ていたらいけないわ」
ここ。
ここってどこ?
待っている人って誰?
そう聞こうとする前に、
「さあ!」
という勢いのいい掛け声と共に、まぶしい光が差し込んできて目が覚めた。
今朝の夢は、母が出てきたのに幸せなのかそうでないのかよくわからない夢だった。
早く起きろと急かされる。
子供じゃないのだからちゃんと起きられるのに、心配して夢にまで出てきてくれたのだろうか。そう思って口元を緩めた。
「イルカせんせぇー!」
ぼんやりとしていたところへ、どんっと腰へタックルをかけるのはナルトだ。
「俺、下忍試験受かったってばよ!」
「そうか!よかったなぁ」
心からそう言って、頭を撫でる。
どうなることかと今日一日心配していたけれど、よかった。
「サスケもサクラもおめでとう」
「ありがとうございます」
「どうも」
素直に、あるいは表情には出さずに、どちらにしても合格して嬉しいことには変わりないだろう。自分まで嬉しくなってくる。
「これ、カカシ先生だってばよ」
「こら!『これ』なんて言う奴があるか!」
叱り飛ばしながらも、緊張して笑顔を作る。
だって、写輪眼のカカシなんだぜ!そりゃあ緊張もするよ。
誰にともなく言い訳をしていると、目の前に手が差し出された。
「はじめまして、はたけカカシです」
それがはじまり。夢の目覚め。