【23:なめんじゃねぇよ】

今日は子供の指導に携わる上忍中忍の合同親睦会だ。
最初は上忍と中忍の間に壁があるかのように一線を引いていたが、時間が経つにつれ線などどこにあったのかすらわからない状態となった。
俺はこの機会を逃さず、さりげなくイルカ先生の側に座ってちびちび飲んでいた。
不埒な輩が近づくのを牽制するためだ。できればもっと仲良くなりたいという野望もある。
肝心のイルカ先生はと言えば、同僚に勧められ、目上の人間に勧められ、かなり飲んでデキあがっているようだった。陽気になるタイプなのか、にこにこと俺に笑いかけてたりする。
そして、いつのまにかじーっと見つめられていた。
ドキドキする。
なんだろう、何かおかしなところがあったかな。
髪型が変とか!?
そう悩んでいる時に、イルカ先生が口を開いた。
「カカシ先生のマスクってどれだけ甘いんですか? 味は砂糖味? はちみつ味? それともメープルシロップ味?」
「は?」
何。なんのこと? 何かの暗号?
突然の言葉に戸惑うばかりだ。
「だって女性が騒いでるから。『甘いマスク』だって」
そりゃマスク違い。
そうとう酔ってるらしい。ああ、ビックリした。
「舐めてみてもいいですかぁ?」
「いえ、あの……先生。ねぇイルカ先生?」
不穏な空気にじりじりと後ずさるが、イルカ先生は下がった分だけ迫ってきて距離は狭まるばかりだ。
本気だ。
酔っぱらっているのだから笑って受け流せばいいのはわかっているが、イルカ先生が好きな俺としては強く抵抗しがたい。しかし、だからといってこのままされるがままになってていいのか俺!
「わー、ちょっとタンマ!」
「お〜い、イルカ。そんなもん舐めんじゃねぇぞ」
遠くからからかうような声が聞こえる。
うるさいぞ、髭は黙ってろ。
そっちの方面に睨みをきかせているうちに、あっさりと舐められた。
「なぁんだ。ぜんぜん甘くなかった」
そう呟くと、イルカ先生は興味を失ってもうぜんぜんこっちを見てくれない。今は海老フライに夢中だ。
えええーっ。
そんな、あれだけ俺を動揺させ期待させておいてそれだけ?
俺、海老フライに負けたわけ?
「酷い、酷すぎる! イルカ先生の馬鹿ーっ」
俺の叫びは、なんでも宴会の隅の隅まで響き渡ったらしい。


[2006.05.20]