「う〜んと長生きして、共白髪になっても一緒にいましょうね。約束ですよ」
と、あの人は言った。
銀髪と白髪の区別はどうやったらできるんだろう。一介の中忍にはなかなか難しい話だ、と思いながら、一緒にいること自体には異論がなかったので頷いた。
この先どうなるかなんてわからない、儚い約束だけれども。
それでも、ただ約束するだけで安心した。いつかそうなれるかもしれないと夢見ていられそうだったから。
そんなことを言ってから数日が経過した頃。
昼休みに外に出ると、アスマ先生と紅先生に声をかけられた。
「よお、イルカ」
「こんにちは。アスマ先生、紅先生」
「今からお昼?」
そんな挨拶程度の会話を交わしているときに、どこからともなく背後から不穏な空気を感じた。はっと振り向くと、そこには顔面蒼白なカカシ先生がいた。
「どうしたんですか、カカシ先生?」
何事かと尋ねると、目に涙を浮かべている。
「イルカ先生、ごめんなさい!」
突然と謝られても戸惑うばかりだ。
「長生きして共白髪っていう約束は守れそうにないんです」
などと言う。
まさか特Sランクの任務でも入ったのかと不安になった。今までどんな任務でもそんなことは仄めかしたことすらなかったのに。
心臓がドキドキしてきた。
「さっき初めて知ったんですけど。生き物の鼓動って、一生のあいだに打つ回数が生まれたときから決まっているんですって」
「はい?」
「だから、イルカ先生を見ていつもドキドキしている俺は、早死にするんです!うわ〜ん。ごめんなさ〜い」
うえっえっ。
顔を覆ってしゃくりあげる上忍を目の前に呆然だ。
「イルカ。災難だな」
「イルカ先生、粗大ゴミは木曜日だから」
肩をぽんと叩かれ、友人であるはずの二人は早々に去っていった。いや、逃げられた。
待ってください。いつもはもう少し頭のいい人なんです。普段はここまで馬鹿なことを言ったりしないんです。……いや、いつも言ってるかも?
フォローのしようがなくて、ガックリと項垂れる。
それでもまだ繰り返される嗚咽を聞きながら、溜息をついた。
愚かだけど愛おしい人。
「カカシ先生。そしたら、俺も一緒にドキドキすれば同じですね」
「う?」
あなたのちょっとした言葉に不安になって、ちょっとした言葉で幸せになる。毎日がドキドキして大変だろう。
「共白髪は無理でも、死ぬのは一緒ですよ」
そう言うと、みるみるうちに瞳が輝き、笑みがこぼれた。
「イルカ先生、あったまいい〜」
泣いたカラスはもう笑っていた。
結局約束は、お互いが死ぬまで一緒にいるのに変更になったのだった。