「カカシせんせー。すいませんが、じゃがいも買って来てくださーい」
どうしても手が離せなくて、寛いでいるのに悪いなぁと思いつつ居間に向かって声を張り上げた。
「んぁ?じゃがいもがいるんですかぁ?」
でれんと伸びた声が返ってくる。
ああ、きっとうたた寝したな、あの人。
しょうがないなぁ。暖かくなってきたとはいえ油断すると風邪をひくから、寝るときは布団で寝ろって言ってるのに。
頭をわしわしと掻きながら、欠伸をしている姿が容易に想像できた。
「ええ、買ってくるのを忘れてました。今ちょっと手が離せなくて、悪いんですけどー」
ぺたぺたと裸足で近づいてくる足音が聞こえる。狭い家だからちょっと歩けばすぐに到着してしまう。
「わかりました。任せてください、今すぐ掘ってきます!」
「はい?」
「でっかいの掘ってきますから」
何言ってんだ、この人!
「……スーパーで買ってくるだけでいいんですが」
「やだなぁ、イルカ先生ったら。俺の愛はそんなそこら辺で売ってるものじゃ表せませんよ!」
「いや、別にじゃがいもで愛を示せって言ってるわけじゃないですから」
「まーたまたぁ。俺、頑張りますよー」
なんか異様に張り切ってるよ。なぜ。
俺の言っていることは正論のはずなのに、聞いちゃいねぇ。
「じゃ、いってきまーす!」
止める暇もあればこそ。あっという間に煙と化した。
はぁ、もう。極端なんだから。
それでも、漏れた溜め息はそのうち苦笑に変わり、しまいには止まらない笑いとなった。
帰ってきたら、たくさん使ってあげなくては。あなたの愛を。
数十分後、これでもか!というくらい両手いっぱいに抱えられた泥付きのじゃがいもは、茹でて潰して山盛りのコロッケになった。
◇Sさんへ感謝を込めて捧げます。