大晦日の夜。
夕飯の後は、二人こたつに入ってだらだらと過ごす。それがささやかな贅沢だ。
ふと窓の外をいつのまにか雪が降り出していた。
それを横目に見ながら、蜜柑の皮を剥きつつTVを観る。
しばらくすると隣に座る人が尋ねてくる。
「TV切っていい?」
「今観てるから駄目です」
断ると拗ねたように口を尖らす。
剥いた蜜柑を手渡すと、少しだけ機嫌が直る。けれどそれもしばらくしか保たなくて、すぐまた聞いてくる。
「ねぇ、イルカ先生。TV切ってもいい?」
「なんですか。今面白いところなんですよ」
紅組と白組の応援合戦が始まって、目が離せないのに。
「……だってイルカ先生。TVついてると俺の話ぜんぜん聞いてくれないんだもん」
こたつ板に顎を乗せて、深々と溜息をつく。
本当に子供みたいなことを言う人だ。
けれど、そんなわがままを言うのも恋人の特権だろう。しょうがないなぁと思いつつ、ビデオデッキにテープをセットする。録画しておいて、後でまとめて観よう。どうせ隣に座る子供が気になって集中できないんだから。
TVの電源を切ってから向き直った。
「で。どんな話ですって?」
つまらなさそうだった顔がぱぁと輝く。
「あのね、あのねぇ」
こんな夜はTVを消して、雪降る音とあなたの声を聴く。