【イルカ先生、猫を拾う】


帰り道。
今、俺の目の前には大きな段ボール箱がある。
そして、その中には何故か銀髪の上忍が入っているのだ。
「みゃあー」
「カカシ先生、何やってるんですか」
「うにゃ」
「…………もしかして捨て猫の真似ですか?」
「にゃあ!」
いい歳をした大人が、それはもう嬉しそうに笑って段ボール箱の中に入っている。
脱力。
本当にコレで上忍というんだから。
ため息。
「遊んでないで、早く帰りますよ」
さっさと踵を返して帰ろうとすると。
「みゃー…」
それはそれは悲しそうに鳴くんだ。
「もしかして拾ってほしいんですか?」
「にゃ!」
思わずコクコクと頷いている。
猫が頷くわけないだろうに、本当にこの人は。
縋るような目をして見てくる。
拾ってやらないとずっとこのままここにいるんだろうか。
そう思うと少し胸が痛む。
はぁ、俺もまだまだ甘いな。
「じゃあ、おいで」
手をさしのべると喜び勇んでタックルをかけてきた。
「うわっ。ちょっと!自分の体重を考えてくださいよ」
「にゃあんv」
ゴロゴロと本物の猫のように懐いてきて。
懐くのはいいが、重いって!
抱きつかれて、離れなくて、動けやしない。
「さ、帰りますよ。段ボールはちゃんと片づけてください」
「にゃー」
片手で印を組み、火遁で一瞬にして燃やしてしまった。
こういうところは上忍っぽいんだけどなぁ。
それから手を繋いで家に帰る。
すごく恥ずかしくて、誰にも会わないようにと祈りながら帰った。


夕飯の用意をしている間も背中にへばりついている上忍、いや猫には参った。
「重いですよ、カカシ先生」
「う゛みゃ!」
俺はそんな名前じゃない!とでも言うように抗議の声を上げる。
「重いから、準備ができるまであっちで遊んでおいで、カカシ」
とりあえず呼び捨てにしてみた。
「みゃあ」
名前を呼ばれて嬉しいけれど、離れるのは名残惜しそうで。
「いい子だからね」
頭をくしゃりとかき混ぜてやると、しぶしぶ離れてじっと見つめている。
かまって、かまって。
声に出しているわけでもないのに考えていることがわかってしまう。
「はい。味見」
あーんと開けた口に里芋を放り込んでやる。
いつもなら食事の前にあげることはないのだが、つい身体が動いてしまった。
「美味しい?」
「にゃ!」
嬉しそうに返事をされると、まあいいかと思ってしまった。



翌朝。
「カカシ先生ー。昨日のおっきい段ボールは役に立ちました?」
サクラが聞いてきた。
「ああ。効果抜群だ!」
親指を立てて自慢げにしている姿に、ため息が漏れる。
なんの効果だ、なんの。
ホントにもう。仕方ないなぁ。
でも、拾わずにはいられなかったから。
自分だとてどうしようもない、と考えて苦笑した。
拾ってしまった猫は、きっと家に帰れば待っていることだろう。
今日はどんな餌をやろうか。


END
2002.04.27


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