【白雪王子】


むかしむかし、あるお城に王さまと王妃さまが仲良く暮らしていました。二人の間にようやく念願の男の子が一人産まれました。王子さまはミルクのように白い肌で、空のように青い瞳と血のように赤い瞳を持っていました。冬の寒いころに雪一面がキラキラ輝くような銀色の髪だったので、みんなは白雪王子と呼ぶようになりました。
ところが、もともと身体の強くなかった王妃さまは、白雪王子が産まれると死んでしまいました。王さまはしばらく泣いて暮らしました。けれど、国を治めていくのに王妃さまがいなくてはならないと家臣たちに説得され、しぶしぶ新しい王妃さまを迎えました。
新しい王妃さまは綺麗な人でしたが、少し自信過剰なところがありました。王妃さまにとって、自分より綺麗で強い人間がいるということは我慢のならないことでした。
実は王妃さまは、不思議な鏡を持って嫁入りしてきました。その魔法の鏡に向かって、こう言いました。
「鏡よ、鏡。この世で一番美しくて強いのは誰?」
鏡は答えました。
《大蛇丸。とりあえず、今んところアンタが一番なんじゃないのぉ》
大蛇丸は鏡の答えに少々不服ながら、おおむね満足していました。
しかし、嫁入り前から付き添ってきたお付きのカブトは、それに対して不平を洩らしました。
「大蛇丸さま。この程度の答えしか返さない鏡のために、あんな大金を出して買うなんて……それぐらい僕がいつもタダで言っているじゃありませんか。もったいない!」
「馬鹿ね、カブト。鏡が言うから価値があるんじゃないの」
大蛇丸が抗議を無視してまったく相手にしてくれなかったので、カブトは溜め息とつきました。
こんな人にずっと仕えなければならないなんて、自分はかなり貧乏くじを引いている。せめてこの変な買い物癖を直してくれないものだろうか。そうすれば少しはマシになるのに、と思ったのはもちろん内緒です。


それから月日は流れ、白雪王子はどんどんと成長していきました。すらりと背が高く、人並み以上の武芸を習得し、いつもみんなの目を引きます。
けれど、本人はなんてつまらない人生だろうと憂えていました。このまま王さまになるための帝王学だけを学び、いつか妃をもらい、王さまになるだけしか道がないなんて、我慢がなりませんでした。
「ああ、つまんないねぇ」
白雪王子はいつもそう呟いているました。
そんなある日のこと、大蛇丸が鏡に聞きました。
「鏡よ、鏡。この世でいちばん美しくて強いのは誰?」
鏡は答えました。
《大蛇丸。そりゃあアンタは強いけどさ。最近は白雪王子の方が綺麗で、強いんじゃないのぉ。》
これを聞いた大蛇丸はびっくりしました。
「なんですって!」
《だって、奴は写輪眼持ってるしぃ》
大蛇丸はブルブルと拳を震わせました。
「カブト!今すぐ白雪王子を殺して写輪眼を奪ってらっしゃい」
「ええー、僕がですかぁ?だって大蛇丸さまより強いんでしょう?無理ですよ」
「つべこべ言わずに行っておいで!」
「はいはい」
カブトはここで不満を言って怒られるよりは、声の届かない遠くへいった方が賢明だと考えました。
そして、一応白雪王子を倒す計画を練りながら部屋を出ていきました。
結論から言えば、カブトは白雪王子を森へ誘うことには成功しましたが、肝心な攻撃は足を狙ったのですが逃げられてしまったのでした。
しかし、それを大蛇丸に報告するわけにもいかず、
「川に落ちてしまって死体は見つかりませんでした」
と嘘をつくしかありませんでした。
もちろん大蛇丸は写輪眼が手に入らなかったことを悔しく思いましたが、これで強いのは自分だということに満足して上機嫌でした。


「ハイホーハイホーッ、仕事が好きー♪」
森の中では、三人の小人が仲良く歌いながら家路へと急いでいました。
「って、俺は別にこんなつまんない仕事は好きじゃないってばよ!」
「うるさい、ドベ」
「ドベって言うなぁ!」
「しっ、ナルト。静かにしてよ」
「サ、サクラちゃんまで……!」
「違うわよ、ホラ!家の中に誰かいるわ」
たしかに、小人たちの家には灯りがついていました。きっと誰かが入り込んだのです。出かけるときに灯りを消していったので間違いありません。
「空き巣か!」
「気をつけて、サスケ君」
「俺に任せておけってばよ!」
恐る恐る家の中に入ってみても、しんと静まりかえっています。
しかし、家の中は散々荒らされていました。誰かが椅子に座り、準備しておいた夕飯を食べ、特別なときのために取って置いたワインを飲んであるのです。そして、小さなベッドには何かの気配がしました。
「誰だ!」
大声で叫ぶと、
「ん〜〜」
と呻くような声が聞こえ、もぞもぞと寝返りをうちました。


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