【ラーメンパラダイス・前編】


もうすぐイルカ先生の誕生日。
愛しい人の誕生日となれば、喜んでもらえるプレゼントを用意したいと思うのは当然のこと。今年は何を贈ろうか。
悩みに悩んだ末に、イルカ先生が一番好きなもの。ラーメンを贈ることに決めた。
そう、ラーメン。大好物でこれがなければ生きる気力をなくすだろうとまで思えるくらい好きなラーメン。週に一回は必ずナルトと一緒に食べに行くのだ。もちろん俺もついて行くに決まっているが。誰が二人っきりにさせるか、こんちくしょー。
おっと、論点がずれた。
つまりそれくらい好きなラーメンを贈れば、俺の株は急上昇。
もちろん贈るといっても、ラーメンを奢るだけでは芸がない。俺自身が美味しいラーメンを作り、それをイルカ先生に食べさせてあげるのだ。我ながらナイスアイディア!
そうと決まれば、数あるラーメン屋の中でイルカ先生の一位に輝く一楽のレシピを手に入れる。他のラーメン屋のでは駄目なのだ。なんといっても一番がいいのだから。
幸い一楽のオヤジとは常連客として付き合いが長いから、きっと教えてもらえるだろう。そう期待して店へと足を運んだ。
がしかし。
「駄目だね。いくらカカシさんだからって、一楽の秘伝は教えてあげられませんぜ」
あっさり断られた。
ここでなんとかしないと、イルカ先生の喜ぶ顔が見られないじゃないか。
「そこをなんとか!」
「駄目駄目!」
取りつく島もない。
なんてケチなんだ!ちょっと厨房に入れてもらえれば写輪眼でコピーできるのに。
こうなったら盗み見するしかない。
ラーメンの仕込みは店が終わってからなのは知っているから、今日の夜決行だ。
のれんをグッと睨みつけて、今は立ち去ることにした。


夜まで時間があったので、ちょうど会ったアスマと話をしていたのだが、偶然そのラーメンの話になった。
「そう。一楽のラーメンレシピを盗み見しようと思ってさぁ」
「やめとけよ。一楽のオヤジといえば、今は足を悪くして引退しているが、昔は上忍だった人だろ」
「え。そうなのか?」
実は盗み見なんて楽勝だと思っていた。なんといっても俺は仮にも上忍だ。
しかし、相手が元忍びとなれば話は別だ。真剣にあたらないと失敗する可能性もある。
決意も新たにしていると、アスマがさらに止めた。
「だからやめとけって。あのオヤジさんは『木の葉の茶色い濃厚』と呼ばれていたらしいぜ」
その二つ名の意味は一体なんなんだ。
「なんだよ、茶色い濃厚って……」
「知るか!俺も小耳に挟んだだけだからな」
アスマが言うには、戦闘中の食料維持班だったらしい。
戦場では戦況もたしかに大切だが、長期になれば食料確保が大切になってくる。敵がてっとりばやく食料倉庫を襲撃してくる場合もある。また、配分された食事に不満を持った仲間の忍びたちがこっそり盗みにきたり、というのは日常茶飯事。食料維持班はそれらすべてを相手にして、なおかつ食料を最後まで守り通すという重大な任務があるのだ。
敵が上忍相手・暗部相手なのはあたりまえだから、隊員たちは特殊能力を要求される。トラップや幻術等々。その班長であったというテウチは、なかなか手強い相手だ。
「食に関する執念は他に追随を許さないって話だぜ。秘伝なんて盗ませてくれるわけがねぇ」
「俺だって元暗部だ。やってやれないことはない!」
最初から全力でいく。油断さえしていなければ、負けるはずがない。
鼻息荒く一楽へ向かう。
「俺はやめとけって止めたからなぁ」
背後遠くから追いかけてくる声を聞きながら、『口うるさい髭め。今に見てろ』と思ったのだった。


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2005.05.21


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