【白い恋人・その後】前編


先日初めてバレンタインデーというものを知った俺だが、他にもホワイトデーというものがあるらしい。
これはサクラに聞いたから間違いないはずだ。
バレンタインに受け取ったチョコと愛の告白に応える日だという。
「チョコのお返しはやっぱりお菓子で、クッキーやマシュマロなんかが一般的よ」
「ふむふむ」
メモを取りながら大きく頷く。なるほど、甘いものには甘いものを返すってわけだな。
「ああー、サスケくんも何かくれないかなぁ」
サスケか。バレンタインも知らない奴じゃホワイトデーも知るわけないだろう。何ももらえないのは目に見えてるなぁと可哀想に思った。
サクラもあんな朴念仁のどこがいいんだかよくわからん。
俺にとってはイルカ先生が一番。
そう考えて思わずニヤけている間、サクラがまだ話をしていた。
「そういえば私の友達が、手作りのマシュマロをもらったことがあるって言ってたわ。いいなぁ」
うっとりと何かを夢見ている様子のサクラをよそに、俺の頭の中は高速回転だった。
手作りのマシュマロ。
それ、すっごくよくないか?心がこもってますって感じがバンバン伝わってきそうなところが。
「サクラサクラ!それ、どうやって作るんだ?」
「マシュマロの作り方?」
「そうそう。教えてよ」
サクラはちょっとうーんと考え込んだ後、まだ書いていない報告書の裏に作る手順を書き出した。
「ありがとね」
礼を言うと、サクラは俺の肩をポンと叩き、
「カカシ先生、がんばって」
と笑顔で応援してくれる。いい子だなぁと感激しながら、紙を大事に懐にしまって別れた。


家へ帰って、さっそくレシピ通りに作ってみる。
ちょっと不格好だけど、まあそこは愛嬌なマシュマロが出来上がった。味は甘いだけだが、白くてふわふわしてる感じがいい。
これをイルカ先生に渡せば喜んでくれるかなぁと想像して楽しかった。
だがしかし。
翌朝起きてみると、膨らんでいたはずのマシュマロはべちょりとしていた。
「何コレ」
つまみ上げて眺めるが、とてもマシュマロには見えない。どちらかというと羽二重餅みたいな。
何度か挑戦し直したが、時間が経つともう駄目だった。潰れる。
気づけば家の中にはわけのわからない白い物体がてんこもりだった。かなり泣きたくなった。
サクラにもう一度教えてもらおうと、慌てて今日の7班の集合場所へと急いだが、目当ての姿はどこにもなかった。
「サクラちゃんは風邪ひいてお休みだってばよ」
「2、3日は任務は無理だそうだ」
「なんだってぇ!?」
なんてことだ、サクラ!お前だけが頼りだったのに。
「忍者が風邪なんかひいていいと思ってるのか!」
「そんなこと言ったって、忍者だって人間だから風邪もひくってば」
くっ、正論だ。しかし、本当の論点はそこじゃない。
もちろん、俺のマシュマロがうまく出来上がってからなら、いくらでも風邪ひいてもらってかまわない。好きにすればいい。だが今はタイミングが悪すぎる。
どうするべきか。
頭が禿げ上がりそうになるくらい悩んだが、ふとある考えが浮かんだ。
そうだ、あれがいい。あれなら答えがわかるはずだ。
我ながらいい思いつきに満足して、ナルトたちの任務を監督中にこっそり忍犬を呼び出し、手を打った。


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