【恋の花咲く勘違い1】

勘違いは恋の素」のカカシサイド。四拾万打リクテーマ『ライトでポップなすれ違いもの』


下忍を指導し鍛える役目を持つ上忍師となり、ある人と出会って恋をした。
今まで知り合う機会もなかったアカデミーの教師は、うみのイルカと言う。
初めて会ったのはナルトたちを引き連れて帰る道すがらで。
今でも覚えている。息せき切って駆け寄ってきて、全開の笑みで挨拶をする顔。子供たちをお願いします、と頬を上気させながら深々とお辞儀する姿。
正直感動ものだった。
この人はどんなささいなことでも一生懸命な人なんだ。
求められた握手に手を伸ばす時、胸の高鳴りで手が震えた。恋に落ちたのだと自覚した瞬間だった。
そうと分かれば手をこまねいてはいられない。
好きになってもらうためにはまず良い印象を持ってもらわなければ。親切で優しくて頼れる人、まずはそこから始めよう。
この恋が実るようどんな努力も厭わないと決意する。
今まではたいした感動もない日々を送ってきたけれど、これからはイルカ先生を見習って自分も一生懸命でありたいと思う。
朝の苦手な俺が早起きし――実際アカデミーへの出勤ってどうしてあんなに早いのか疑問だ――、帰りは待ち伏せて飲みに誘う。ナルトとラーメンを食べに行くという情報を仕入れれば、一楽まで先回り。貰った野菜をだしにして自宅まで押し掛けるのだって忘れない。
努力を重ねて親密度をあげていく作戦。
がしかし。いつも空回りしている……気がする。
それとなく好意を匂わせても見当外れな方向で尊敬されたり感心されたり、とにかく思惑通りにいった試しがないのだ。
鈍いのか、眼中にないのか、はたまた言外に友人付き合いに留めておきたいと言われているのか。判断に迷う。
恋人同士になりたいと強く願ったことも初めてなら、自分からアプローチするのも初めて。こんな俺だから相手の心の機微など分かろうはずもない。
それでもきっぱりと迷惑と言われない限りは諦めたくない、と思っていた。
そんなある日、イルカ先生がアスマと話しているところに出くわした。
ちっ、なんて馴れ馴れしい奴だ。髭のくせに図々しい。
話しかけてんじゃないよ。
それだけでもイライラしていたのだが、あまりにもしゃべっているイルカ先生の笑顔が眩しくて、まさかまさかと思い始めた。
まさかイルカ先生はアスマを好きなんじゃないだろうな。
そんな!
ひそかに酔っぱらった時に聞き出した情報では、男を好きになったことなんてないって言ってたのに!
そうだ、大丈夫。ちょっとした好意だ。好きとか付き合うとかそういうレベルじゃないって。
たとえ幸せで蕩けそうな表情だったとしても……馬鹿っ、髭はもう離れろ! 近づきすぎ!
殺気を込めて睨んでいたら、ふっとイルカ先生がこちらを見る。
はっ、見られた。まずい!
いつも笑みを絶やさず優しさを前面に押し出した俺が、睨んでいたという事実は非常にまずい。イルカ先生もどこか衝撃を受けたように黙り込んでいて、もうどうしたらいいのかわからない。
嫌われたかもしれない。
その恐怖は、イルカ先生がアスマを好きかもしれないという疑惑と共に俺を苛んだ。


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2007.10.20


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