【恋の花咲く勘違い7】


翌朝になっても気分は最悪。寝れば悩みは消えてなくなるなんて、誰が言い出した嘘なんだ。
昨日のイルカ先生の涙が頭から離れなかった。
いやでも、俺だけが悪いわけじゃない。
だってイルカ先生はもっと酷いことをしたんだから。俺がイルカ先生を好きなことを知っていて、それを踏みにじるような真似を。
俺の告白なんて最初からどうでもよくて、アスマへの告白にそのまま使うために聞いていたわけだよ? 人の心を弄んでたってことじゃないか。いくらイルカ先生でもそりゃないよ。
そうだよ、俺は悪くない!
自分にそう言い聞かせて家を出たが、瞼を腫らしているイルカ先生を見かけた瞬間に強気な考えは吹っ飛んでしまった。
あれからずっと泣いていたんだ……。
そんなにアスマのことが好きだったんだ。
居ても立ってもいられなくなって俺は走り出した。
向かった先は上忍控室。柱が撓むくらいの勢いで開けた扉の先に、運良くアスマはいた。
「アスマ! お前、紅とはうまくいってるのか!」
「なんだよ、唐突に」
のんびりと紫煙を吐き出して、状況を読めない壊滅的な鈍さだ。
「別れる可能性はこれっぽっちもないのかって聞いてるんだ」
「縁起でもないこと言うなよ」
アスマは顔を顰めているが、縁起が良いか悪いかはこの際関係ない。イルカ先生が告白したら紅と別れて付き合う気があるのか聞いているんだ。
俺の気迫が伝わったのか、奴も答えないと不味い気がしたのだろう。
「あ〜、ないない。これっぽっちもないな」
面倒くさそうがらもしっかりした答えを聞いて、はっと我に返った。
危ないところだった。
さっきのイルカ先生を見たら、もう何が何でもアスマと幸せになって欲しいと衝動的に思ってしまった。
俺の脳みそはどうかしてる。そんなこと願うはずがないのに。
でもだってあんな風に泣かれるくらいなら、と思ってしまうじゃないか。
「いったい何なんだ」
何もわかってない熊にイライラする。
「イルカ先生は、お、お、おま、お前に……!」
「イルカが何だって?」
お前に告白する気だったって言えるかー!
「全部お前が悪いんだ……」
「なんでだよっ」
一見強面で、でもいかにも人が好さそうな、悪い事なんてしませんみたいな顔をしてイルカ先生を騙してたんだから! きっとコロッといっちゃったんだ。
恋人がいると分かれば、きっと今は悲しんでいても目が覚めるはず。そうすれば俺にだってまだ希望はある。ちょっと光が見えた気がした。
だが、よく考えたらイルカ先生がたとえアスマを諦めたとしても、昨日あんな意地悪な態度をとってしまった俺を好きになるなんてありえないんじゃないか?
普通はそうだよ。
「もう俺、駄目かも……」
俺にだってこれっぽっちも可能性なんてないじゃないか。
「だいたいお前はウザいんだよっ。気持ち悪いったらねぇな」
ウザい。気持ち悪い。
別に髭になんと言われようがどうでもいいが、イルカ先生に言われたら死にそうだ。
どよりと空気を濁らせていると、突然と控室のドアが勢いよく開く。
襲撃かと身構えたが違っていた。
「酷いです、アスマ先生!」
「イ、イルカ先生!?」
どうしてここへ。
狼狽えているうちに当の本人はどんどん近づいてくる。
そして憤慨しているように見えた。握りしめた拳がぶるぶる震えている。
さっきの会話も聞かれてしまったんだろうか。
どうしたらいいんだ!
俺の緊張が頂点に達した時、イルカ先生が叫んだ。
「あんまりじゃありませんか。カカシ先生はアスマ先生に恋してるのに!」
何、今の。
俺の空耳? 空耳アワー?
「あの、もしもし? イルカ先生?」
きっと俺の聞き間違いに違いない。
いやだなぁ、昨日からいろいろあって耳がおかしくなってるんだよ。
「イルカ先生は俺の好きな人を知ってるって……」
「だから。カカシ先生はアスマ先生が好きなんでしょう? 知ってます、そんなことぐらい」
自信たっぷりに言われた!
アスマニコイシテルって誰が。
カカシ先生が。
え、俺が? 俺がー!?


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2007.12.22


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