【勘違いは恋の素6】


カカシ先生は任務へと旅立ってしまい、俺は授業の受け持ちがない空き時間に職員室でうんうん唸っていた。
アスマ先生とゆっくり話さなければ、と意気込んでみたものの、一体何をどう話せばいいんだろう。
カカシ先生の気持ちを勝手に伝えてしまっては不味いし。かといって全然関係ない話をしても意味はない。
はぁ、前途多難だ。
こんなことでは会いに行こうにも会いに行けない。
今日は十班の任務もなくて、アスマ先生は控室で待機中という絶好の機会だというのに。
何か、何かないのか良い案は!
机の上に突っ伏してじたばたしていて、ふと閃いた。
そうだ、いいことを考えついた!
要はカカシ先生の良さをアピールできればいいんだ。
出会ってからまもない俺がカカシ先生のことを語ったって、付き合いが長いアスマ先生には鼻で笑われるだけ。それなら逆にカカシ先生のことを教えてもらうフリをして、アスマ先生の記憶の中のカカシ先生像を掘り起こして良いところをたくさん思い出してもらうんだ。
そうすれば、ああ俺にはこんな身近に良い人がいたのにどうして気づかなかったんだろうと思うんじゃないだろうか。
いいじゃないか?
ちょっと消極的な方法かもしれないけれど、今の俺にできる精一杯の策だと思った。
よし! さっそく実行だ。
俺は勢い込んで立ち上がった。


控室を覗くと幸いちらほらとしか人がいなかった。しかし、そこは上忍用の控室。用事もないのに気軽に入っていけるところではない。
気後れしていると、アスマ先生が灰皿で煙草を揉み消した瞬間に目があった。
「どうしたイルカ。何か用事か?」
提出した書類がどうかしたのかと問われ、そうではないのだと否定すると、それならちょっと休んでいくかと誘われた。
どうやって入っていこうかと思い悩んでいた時に渡りに船。たとえ社交辞令だったとしてもこの機会を逃すわけにはいかない。ぜひに、と返事をすると快く迎え入れられた。
部屋の片隅のソファに座ってから、おそるおそる話を切り出す。
「あの……カカシ先生ってどんな方なんでしょうか」
「カカシが何かしたのか!?」
アスマ先生は驚愕の表情と共に、下ろしかけた腰を浮かせたまま固まっている。
あまりの反応の激しさに驚いた。
何かって何をするんだろう。
不思議に思ったが、でも、もしかしてそれってアスマ先生もカカシ先生を気にしてるってことじゃないか?
そう考えれば希望はある。
「いえ。ただ今まで交流の無かった人なので、どんな風に生きてきた人なのかなぁと思って……深い意味はないんです。ナルトたちもお世話になっているので気になりますし」
興味はあるけど恋愛感情はないですよ、というのを密かに主張しておく。
「ああ、なるほどね」
いや、俺はまたてっきり……という呟きが聞こえたが、最後の方は全く聞き取れないほど小さく、結局有耶無耶になった。
てっきり何だろう。
よくわからなかったが、ともかく話の続きだ。
「カカシ先生のことならアスマ先生に聞けばきっとよくわかるだろうと思ったので」
誉め言葉のつもりだったが、アスマ先生は眉を顰めて憮然としている。
あれ? 俺はなにか変なことを言っただろうか。
「まあ、友達少ない奴だしな……」
「えっ、そんな! アスマ先生のこと、いつも頼りにされてるんじゃないんですか?」
「頼りにされすぎるのもどうかと思うが……」
悲しそうに溜息をつくアスマ先生を見て、もしかしてと思った。
友人として頼りにされるより、恋人として見て欲しいってこと!?
思わず拳を握りしめた。


●next●
●back●


●Menu●