【さかしまの国11】


カカシの心配をよそに、イルカの話は続いていた。
その後、敵方の血継限界の少年はもう一人を庇い、イルカの攻撃を受けて死に至ったそうだ。結局二人そろって儚い雪の中に消えていったという。
カカシは最後まで話を聞いて、ではその忍びとしての在り方がイルカの中でひっかかっているのだろうかと考えた。たしかにそれは誰もが悩むことで、永遠の問いといえる。
しかし、それとも少し違うような気がする。どちらかといえばイルカは悲しんでいるように見えた。
「ナルトたちとあまり変わらない歳の子供を、この手で殺してしまいました」
イルカは手のひらをじっと眺めた後に、ぐっと震える手を握りしめた。
カカシはもしかして、と思った。
イルカのことを上忍で元暗部と認識していたため今まで思い至らなかったが、敵の子供を殺したことを悔いているのではないだろうか。
まさかそんな初歩的な悩みだとは思っていなかったカカシだった。
忍びならば、ましてや暗部に所属していれば、それは日常茶飯事ではないのか。
そんな疑問を抱えながら面と向かって言うわけにはいかず、どうしたらいいのかとオロオロしていた。しかし、ふと思いついたことを口にしてみた。
「もしかしてイルカ先生。今まで自分より若い人間を殺したことがなかった…?」
「はい……。今までは自分より年上に見える人ばかりで」
ああ、そうか。6歳で中忍だったから。
いつも強い忍びと戦うとすれば、必然的に年上になってしまっていたのだろう。自分より若くて小さい子供とあたったとしても、任務が暗殺を目的としていない限り、実力の差があれば殺さないですませることも可能だ。
それで目に見えて落ち込んでいたのか。可哀想に。
「泣かないんですか」
「ナルトたちのようには泣けません」
イルカは穏やかな口調ではあるけれど、しっかりとそう言った。
子供たちのように素直には泣けないと。
「涙が出ないと、いつまでたっても棘のように残るのに」
カカシがそう言っても、イルカは少し悲しそうに微笑みながら首を振る。
これはよくない兆候だ。
このままいけば、いつまでもそれは凝りとなってイルカを苦しめるのではないかと思われる。だからカカシは敢えてきちんと向き合っておくべきだと考えた。
「イルカ先生は小さい子供が死ぬことを、殊更残酷なことのように考えてる」
「そうではありませんか」
イルカは少し戸惑いながらカカシを見つめた。
自分の考えていることを否定されて、不満に思うのが半分、不安に思うのが半分。そう思っているのがカカシにはよくわかった。
「違います。死は誰に対しても残酷なものです。すべてに平等に」
「………………」
「だから、子供だけを哀れむ必要はありません」


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