【明日の夢を今日夢見る15】


料理を全部運び終わり、食卓に並べて食べ始めることにした。
今までずっと一人だったのに、今日は自分以外に二人も人がいるということが嬉しかった。
うきうきと手を合わせ「いただきます」と言えば、カカシさんもすぐ側で「いただきます」と両親指に箸を挟んで合掌している。カカシ先生はぼんやりとそれを眺めていたようだ。
食事前の挨拶はしない家で育ったのかもしれない、と思った。実際アカデミー生でもそういう環境の子は多い。だから知らない子供は初めて見たときは意味がわからなくて戸惑うのだ。
カカシさんはいつも一緒にしてくれていたから気づかなかった。これからそういう習慣が身に付いていくのだろうか。そうだといいなぁと少し思った。
「イルカさんの料理は美味しいですねぇ」
カカシさんはいつも誉めてくれる。たいした料理でもないのに。
でも単純だから誉められると嬉しい。思わず笑みがこぼれた。
そのあと、カカシさんは何かを促すようにカカシ先生の方をじっと見つめている。
カカシ先生はきっと睨み返した後、しばらく俯いて黙ったままだったが、ようやくぼそりと呟いた。
「……美味しい…デス」
その時の表情が、いかにも不本意だと言わんばかりで俺は慌てた。
よく考えてみれば、カカシさんが好きな物をカカシ先生も好きとは限らない。食べ物の好みなんて年齢と共に変わっても不思議じゃないのだから。ちゃんと苦手な物がないか確認しておくべきだったと後悔する。
「あ、すみません!もしかして、サンマ苦手でしたか?カカシさんが好きだからてっきりカカシ先生も好きだとばかり思っていて……今、何か代わりのものを作ってきますね」
わざわざ気を遣って食べることはないと思って片づけようとすると、カカシ先生はさらにムッとした顔で、
「そんなことはありません!美味しいです」
と言う。そして、皿へと伸ばしていた俺の手を振り払い、ものすごい勢いですべて平らげてしまった。
そのすばやさに驚きながら、自分も早く食べ終わらなくてはと慌てたけれど。
「よく噛まないと消化に悪いですよー」
とカカシさんが言ってくれたので、食べ終わるまでの間カカシ先生にはしばらく待ってもらうことにした。
もう食べるものがなくなって手持ちぶさたなのか、食事中ずっとカカシ先生がこっちを見ていて緊張する。なんとか食べ終えて、みんなで食後のお茶を飲む頃になると湯飲み茶碗に視線がいくのでホッとした。
そうなると、疑問に思っていたことを聞いてみようと言う気持ちの余裕も出てきた。
「あの……カカシ先生はどうしてここへ?」
玄関に立っている姿を見たときは呆然として頭が回らなかったけれど、よく考えたらどうしていきなり訪ねてきたんだろうと不思議だった。
「アスマにからかわれたんですよ、中忍試験の説明会のときのこと。『ありゃ痴話喧嘩か』って」
「あ」
そういえばアスマ先生は俺とカカシ先生が付き合ってるって信じているんだった。
「意味がわからなくて問い質したら、『同棲してるんだろ』とか言い出すし」
噂が耳に入らないうちに話そうとしていたのに、なんてタイミングの悪い。
自分のあずかり知らぬうちに『同棲してる』なんて言われていると知ったら、確かめようと訪ねてくるのも頷ける。
「本当は昼間お話ししようと思っていたんですが、なかなか機会がなくて……」
「事情はおおむね理解できました」
「それはよかった!」
それではやはりカカシさんがちゃんと説明してくれたのだ。そう思って安堵した。
同棲などと噂になってしまったのは俺自身も驚いたので何とも言いようがないけれど、これでカカシ先生もわかってくれたはずだ。誤解が解けて俺も嬉しい。
と喜んだのもつかの間。
「でも納得はしていません」
「え」


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