【明日の夢を今日夢見る16】


夕飯を食べ終わった後の片づけはカカシさんと決まっていて、だからカカシ先生に先にお風呂に入ってもらおうと思った。
「カカシ先生、お風呂どうぞ。カカシさんは皿洗いが終わってからで、最後に俺が入りますから」
「いえ、俺が皿洗いをやります」
「でも……」
「食事を作ってもらったので、片づけはやりたいんです」
頑なに片づけると言い張るカカシ先生。どうしようかとカカシさんの方を窺うと、
「じゃあ、一番風呂は俺が入りましょう」
と言うので、そうすることにした。
皿を洗い始めるカカシ先生を一人放っておいてくつろぐわけにもいかず、俺は台所での作業を見守っていた。
泡立てたスポンジで皿を洗っていたカカシ先生が、躊躇いがちに口を開く。
「あの……本当に料理は美味しかったですから」
「え?」
「ちゃんと言わないのはよくないと思って。別にあいつに促されてしぶしぶ誉めたわけじゃありませんよ」
ああ。あのときのこと、気にしていたんだ。
「……俺だってイルカ先生の作った料理、美味しいと思いましたよ。それをあいつが先に誉めちゃって!ムッカつく」
思わずぷっと吹き出す。
カカシさんが先に誉めたから言い出せなかったんだ。
いったん笑い出すと、なかなか止まってはくれなかった。
だって、まさか上忍ともあろう人がこんな子供っぽいとは!
ようやく笑いが止まる頃には、気分も晴れやかだった。今なら正直に話せそうだ。
「カカシ先生は俺のこと、嫌いなのかと思っていました」
途端、カカシ先生の顔色が変わった。あ、この話題はまずかったかな。
「な、なんですって?」
「あの……ほら、よく睨まれていたりしたから……」
「あれはあなたのことを見てたんですよ!だって、俺はイルカ先生のことが好きだから」
「ええっ!?」
そんな馬鹿な。
「俺があんなに『好きです好きです、愛してます』って想いを込めて見つめていたのに、睨んでるだなんて!あなた激鈍だっ」
そ、そんな。
だって絶対睨んでた。あれは睨んでる以外の何物でもなかったよ。
今だって正直睨んでいるように見えるし。
でもそうじゃなかったんだ。カカシ先生はただ不器用で、思っていることが素直に伝えられないだけなんだ。
「嫌われているんじゃなかったんだ……」
「そんなわけないじゃないですか!」
なんだ、そうだったんだ。よかった。
すごく嬉しい。
「だいたい、なんで俺が『カカシ先生』で、あいつが『カカシさん』なわけですか…っ」
なんだか子供みたいなやきもち。
納得いかない、そっちの方が恋人っぽい!とカカシ先生が騒いでいるうちにカカシさんがお風呂からあがってきて、その話は中断することとなった。


その後、カカシ先生の後に俺が入浴すると、もういい加減寝る時間だった。
「布団はどうしましょう。お客さん用が一組しかないんです」
寒い季節ではないから、俺が布団なしで居間に寝ようかと思っていたら。
「しょうがないから三人で寝ましょう」
とカカシさんが言う。
「どうやって?」
「布団を二組くっつければ、男三人でもなんとか寝られないこともないですね」
カカシ先生までそんなことを言う。
かなり狭いとは思うが仕方がない。
「もちろん真ん中はイルカさんですよ」
大人二人にかこまれて真ん中で寝るなんて、何年ぶりだろう。子供の頃を思い出して懐かしくなった。
「おやすみなさい」
「おやすみ、イルカさん」
「おやすみなさい、イルカ先生」
俺は布団に潜り込んで、今日はいろんなことがありすぎて大変な一日だったと回想した。
でも誤解は解けたし心は軽く、満足な吐息を漏らして眠りに落ちたのだった。


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2005.06.04


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