【いつかの約束1】


どうやらはたけカカシが怪我をして入院したらしい。
と聞いたのは、アカデミーの仕事も終わってさぁ帰ろうかという夕暮れ時だった。
カカシ先生が?
まさか、と思った。
だって今日は下忍の監督任務だったはずなのに。
ただの噂だ、と頭では思いながらも、足はつい病院へ駆けだしていた。


信じていなかったその話は、やはり事実だった。
病院には、7班全員や他の親しい上忍の方々が集まっていた。
驚いたけれど、みな帰ろうとしていることに気づき、それほどたいした怪我ではなかったのだと安堵した。その割には一様に表情が暗い気がしたが。
「あの……」
「イルカまで来たのか」
アスマ先生が苦笑して、近づいてくる。
「なんだかなぁ。頭を打ったらしくて、いや、怪我は大したことはないんだ。ただ記憶がないっていうんだな」
「えっ」
「そんなアホみたいなことになるとは思わなかったぜ。実際あるんだな、記憶喪失って」
ガリガリと頭を掻きながら説明してくれた。
「記憶喪失って…?」
「俺たちのことも何も覚えてないんだ。忍者だってことは漠然とわかってるみたいなんだが…。どうも人の顔やら名前やら、今まであった出来事全般を忘れてるみたいだな」
「そうなんですか」
「まあ、ここにいても記憶が戻るってもんでもなし。しょうがねぇから今日のところは帰るところだ」
じゃあな、などと言って上忍師たちは帰っていった。
子供たちは心配そうな顔をしてまとわりついてくる。
「俺がいけなかったんだってばよ」
「そうじゃない。俺が」
「私がちゃんとしていれば…」
切れ切れに話される断片を拾い上げて、どうやら子供たちを庇って頭を打ったらしいとわかった。
「大丈夫だよ。命に別状はないんだろ?頭の怪我も大したことないらしいじゃないか。そんなに心配するな」
「でも……」
「ほら。そんな顔してるとカカシ先生に叱られるぞ。しばらくは任務の監督はないだろうけど、戻ってくるまでもっと体を鍛えておけよ」
そう言うと、子供ながらもいっぱしの下忍たちは理解したようだ。自分のできることをしなくてはいけない、と。
「わかったってばよ!」
「じゃあ、私たちも帰ります」
「さようなら、イルカ先生」
「気をつけて帰れよ」
子供たちを見送り、はたと気づいた。
自分も帰るべきだったろうか。
しかし面会謝絶な訳でもなし、せめてこっそり顔だけでも見ていってもいいかなと思い直した。


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