【ときめきマイッチング☆】前編

三周年チャット記念SS『DBのランチなイルカ』


そのときカカシは急に駆り出された暗部の任務にぼやいていた。
あー、面倒くさいったら。下忍担当になったらもう呼び出されないと思っていたのに、人使い粗いよな。
そう心の中で呟きながら、それでも集合場所へと急いだ。
なんでも今回はけっこう大規模な任務で、小隊がいくつも合同して任務にあたるらしい。
集合場所に数人の人影が見えた途端、その中の一つが駆け寄ってくる。
「カカシ先生!」
「イルカ先生!?」
なんと息を切らせて走ってきたのは、カカシの恋人のイルカだった。
カカシは思いがけない人を目の前にして、自分の目を疑った。これから任務に赴こうとするこの場所で顔を合わせるような人ではなかったはずだ。もしかして自分の見送りかと思おうにも、まぎれもなく暗部の衣装を纏っている姿を見てしまっては、そんな胡散臭い嘘も思い込こめそうにない。
「どうしたんですかっ、こんなところで」
昨日は『里外任務でしばらく会えないのは寂しいです』とか可愛いことを言っていたくせに!とカカシは焦っていた。
「どうって……任務ですよ。今朝早く火影さまに呼び出されて直々に仰せつかったんです」
「そんな!危険な任務なんですよ!」
はっきり言って中忍が参加するなんて聞いていないし、そんな簡単な任務ではなかったはずだ。実際アカデミー教師を務めるイルカが、暗部の独特の雰囲気に染まる姿は想像できなかった。
「大丈夫ですよ。これでも中忍ですから」
にこっと笑うイルカに、カカシはたまらなく心配だと言いたげな視線を送り続けた。
しかし火影命令とあれば、よほどの理由がなくては拒否できない。
「……そういえばカカシ先生と一緒なのは初めてですね」
イルカは首を傾げながらそう言った。
「ええ」
今まで暗部にいたからイルカと共に働くことなどない、とカカシは思っていた。しかし。
「不思議ですね。今まで一緒になったことがなかったなんて」
と、驚くような発言をする。
「えっ。イルカ先生、暗部だったんですか?」
「まさか!違いますよ。たまにお手伝いしていただけです」
「そうなんですか!」
初耳だった。どうして今まで知らなかったのだろう。
カカシがあまりの衝撃に呆然としているうちに、出立の時間となった。


あともう少しの距離に敵がいる、という手前で部隊は待機していた。
カカシはといえば、とにかくイルカに危険がないよう自分が命をかけて守らなくては!という決意に充ち満ちていて、周囲にまでチャクラが漏れだすという騒動が起きたばかりだった。
できるだけ大人しくしていると誓いを立てさせられ、ようやく許されてイルカの横に待機していると、ある小隊の隊長にイルカが呼ばれた。
木の影に連れて行かれるのを見て、『あの野郎、まさか職権乱用で?それが本当なら殺す』と思いながらカカシは近くで耳をそばだてていた。
「……っくしゅん」
小さなくしゃみの音がした。
「敵はもう目の前だ。頼んだぞ、うみの」
隊長がそう言いながら姿を現した。その後イルカがこちらへ来るのをカカシは待っていた。
しかし姿を現したイルカは、姿形はいつもと変わらないのにも関わらず様子がおかしかった。
「ふふふ……腕がなるぜ」
「イ、イルカ先生?」
イルカは、カカシが呼びかけるのも耳に入っていない風で、普段からは想像もつかないような凶悪な笑みを浮かべて目の前を見据えていた。
そんなとき。
「敵襲だ!」
木の葉側の誰かが声を発し、その場にいる全員に緊張が走った。
「行くぞ」
イルカがそう言ってさっさと出撃しようとしたが、カカシはまだ呆然と立ちすくんだままだ。イルカが振り返り、
「てめぇ、モタモタしてんじゃねえよっ!」
と言い捨てて立ち去ってからも、まだ数十秒間呆然としていた。
「え?え?え?」
混乱しながらもイルカの後を追ったのは、さすが恋する男と言うべきか。
ただし、参戦するのは難しかった。ほとんどイルカの姿に釘付けだったからだ。
カカシが呆然と眺める中、戦場と化した荒れ野では『このボケナスがーっ!』とか『モタモタしてたら俺が踏みつぶすぞ!』などといった罵声が響き渡り、その凶暴さを前に敵はあっさり陥落したのだった。


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2004.11.20


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