【愛は噂や嘘よりはやく走れない7】


最近はカカシが声をかけてきてもなぜか周りの事態が急変し、ろくに話を出来ないまま別れるばかりだ。
以前よりも顔を合わせる回数は増えたのに、話す暇がない。そんな日が何日も続いた。
なんだか物事すべてのタイミングが悪い気がする。以前は顔を見られるだけでも嬉しいと思っていたけれど、これではなんだか寂しい、とイルカは思う。
アオイという彼女がいる状況で、声をかけてもらえるだけでも喜ぶべき事なのかもしれない。それがわかっていてもゆっくり話がしたいと思ってしまうのは、自分のわがままなのだろうか。
イルカは鬱々と思い悩みながら帰途へつく。
そこへ声をかけてくる人物がいた。
「よお、イルカ。なんだか元気がないぞ?」
「ガイ先生! お久しぶりです。ガイ先生はお元気ですか」
「俺はいつだって元気さ」
ガイは眩しいくらいの笑顔を振りまく。
それを見て、イルカは鬱々とした気分が少しだけ解れた。
ガイは上忍の中でも格別強いと評判の有名な忍びなのに、奢ったところが少しもない。いつも元気ではつらつとしていて、日々の鍛錬も欠かさない。そのうえ弟子を思いやるのは人一倍。
そんなガイをイルカは常々見習いたいと思っていた。
「イルカ。何か悩み事があるならいつでも相談にのるぞ」
尊敬するガイにそう言われ、躊躇う気持ちもあったが、今の迷った状況の答えが得られるのではないかとも思った。
「えーと、今まで親しくしていた人に恋人ができてですね。気軽に飲みに誘えなくなってしまったんです。本当はその人の幸せを考えると喜ぶべきなのに……」
「なんだ、そんなことで悩んでいるのか? イルカが何を心配しているのか俺にはよくわからんな。その友人と飲みに行きたいならそうすればいいじゃないか」
ガイはあっさりとそう言うが、そうもいかないだろう。
「じゃあ、例えばガイ先生は恋人と友人と両方から食事に誘われたらどうします?」
「もちろん先に約束した方と行くに決まってるさ」
答えは明快だった。
ガイにはしっかりとした信念があり、迷うこともない。
「でも普通は恋人が優先ですよね」
「そんなことあるものか! 先約が大事なのに変わりはないぞ」
ガイにとってたとえそれが誰であろうと、先に約束した方が大事。もちろんそれは正論ではあるのだが。
「でも……」
「恋人がいようがいまいが、友情だって大事だ。それとも相手はそんな情のない男なのか?」
「カカシ先生はそんな人では……」
先日アオイの前でイルカを誘ったところを見れば、ガイの友人であるカカシも友情に厚い人間なのだろう。しかし、カカシに片想いしているイルカにとって、本当の意味で友人とは言えないということがひっかかっている。
「なんだ、相手はカカシか!」
「あ」
なんで名前を出してしまったんだ!
イルカは自分の馬鹿さ加減に、壁に頭をぶつけたくなった。
しかし、ガイは気にした風もなくしゃべっている。
「カカシならきっと頷くだろう。あれは意外とつきあいのいい奴だ」
「でもご迷惑なのでは……」
躊躇うイルカに、ガイは首を傾げた。
「迷惑かどうかはカカシが決めることだろう。それに、カカシに恋人などいたのか?」
「え。でも、この前みんなが」
アオイとつきあうのは確実だと言っていた。それにその本人も見た。綺麗な人だった。カカシだってきっとヨリを戻したいと思うだろう。
「カカシ本人がそう言ったわけでもあるまい。俺はそんな話は聞いたことがないしな」
たしかに本人からそんな話を聞いたことはない。
仲がよいと言われるガイがそう言うのなら、もしかしたらそうなのかもしれない。イルカは少しだけ希望を持った。
もちろん後でガッカリするかもしれないけれど、今はまだ夢見るくらいは許されるはず。
「ありがとうございます、ガイ先生」
「なぁに気にすることはない。頑張れよ、イルカ」
「はい」
ガイはさらに励ましてくれ、イルカは感謝を込めて深々と礼をして別れた。
カカシ先生に思いきって話しかけてみよう。
イルカはそう決意した。
とにかく行動してみるべきだと思い、イルカはカカシを捜し始めた。


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2006.10.28


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