【今日もがんばれ!アスマ先生】

『うたうたい。』さまとの相互リンク記念SS
リク「アスマ先生の受難シリーズ」


「イルカ先生、イルカ先生!」
嬉しそうにカカシがイルカに声をかけているのが見えた。
それはもう日常的な風景で、これといって特筆すべきことは何もない。アスマは関わらないように通り過ぎようとした矢先、耳に入ってきた言葉に足を止めた。
「俺んちの風呂、大改造したんです。ちょっとした温泉風なんですよ。総檜だし!イルカ先生も入りにきませんか?」
あっと叫びそうになるのを懸命に堪えた。
風呂が完成したのかーー!
マズイ。
非常にマズイ。
このままでは『ドッキリ☆イルカとお風呂タイム大作戦』が決行されてしまう!
風呂の改装工事が始まってから、毎日のように耳タコで聞かされた計画の数々が脳裏に浮かんだ。
というか、いい年した大人が『ドッキリ☆』も何もないもんだろう。
いや、そんなことはこの際どうでもいい。
湯治好きのイルカがカカシの誘いに乗ってしまうとマズイ。
そういうことに疎そうなイルカは易々と騙されかねない。
狼に羊を喰ってくれと差し出すようなものだ。
もしそうなったら、例えどんな人間だろうと申し訳なさと罪悪感でいっぱいになるだろう。
「すごく楽しみです」
イルカの返事に、ハッと我に返った。
考えにふけっている間に、今度の土曜日にカカシの家へ行く約束は成されてしまった。
「絶対ですからねー」
何度も振り返っては念を押しつつ、浮かれた様子で去っていくカカシ。
アスマはそれをじっと見送った。
もう戻ってこないことを確認してから、改めてイルカに声をかけた。やはりカカシが何を目的として風呂に誘っているか、きちんと言っておくべきだろうと思ったからだ。
がしかし、何から話していいものかと迷っているためか、なかなか言葉が出てこない。
「イルカ。あー、そのー…あのだな……」
「わかってます」
「あ? まだ何も言ってないぞ」
それともカカシの言動から滲み出ていた邪オーラから察したのだろうか。
それなら話は早い。
しかし、その判断は間違いだった。
「つまり、アスマ先生もカカシ先生の家のお風呂に入りたいんでしょう?」
つまり何か?
俺が風呂に入りたいが為にここに立ち尽くし、お前らを羨ましげに眺めていたとそう言いたいわけか?
軽い眩暈を感じたが、なんとか踏みとどまった。
少しずれているが、この際そういうことにしておいてもいい。
二人っきりでなければそうそう手も出せんだろうと判断した。
「……あー、まあな」
「大勢で入った方が楽しいですよ。一緒に行きましょう」
「ああ、そうだな」
一緒にカカシの家を訪問する打ち合わせをし、ハタと思いついた。
「あー、カカシには俺が言い出したってのは、内緒にしておいてくれないか」
「いいですよ。俺が強引に誘ったことにしましょう」
にっこりと笑う顔を見ながら、きっとイルカの中では『風呂に入らせろなんて男として口に出せるか』と子供のように考えている人間として認識されているに違いない。
そう予測してげんなりしたが、今さら違うと否定するわけにもいかなかった。


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