【おくりものラプソディ】

けろぽんさま退院お祝い第二段SS
リク「アスマ先生の受難シリーズ」


「もうすぐイルカ先生の誕生日なんだよね」
気がつけば、いつの間にか隣に座っている人物がポツリと呟いた。
ある昼下がりの午後。ぼんやりとベンチに腰掛けて、日向ぼっこを満喫していたのに。
その平和は堪能する暇もなく破られる運命にあるようだ。
なんといっても、あのはたけカカシに捕まってしまったのだから。
近づいてくる気配に気づかなかったとは不覚だ。無駄に上忍の能力を発揮しやがって。
無駄な抵抗とは思いつつ、このまま返事をしなければどこかに去っていってくれないかと期待してみたりもする。
しかし、それはあまりにも甘い考えだった。
「誕生日といえばプレゼント。やっぱり贈り物はイルカ先生が泣いて喜ぶようなものじゃなくちゃね!そう思わないか、アスマ」
期待をアッサリと裏切って、しゃべり続ける内容はやはりその話題しかあり得なかった。
「でも、欲しい物が何かわからないんだよ。俺には寂しがりやさんのイルカ先生に、俺のあらん限りの愛を注ぐという重大な使命があるというのにっ!なんたる不覚っ」
『寂しがりやさん』って。
25歳にもなろう男にそれはどうだろう。
しかし、口角泡を飛ばさんばかりに力説しているカカシに逆らう気力はなかった。
「……あー、そうだな。ウサギは寂しいと死ぬって言うしな…」
「そう!そうなんだよ!」
バンバンと叩かれた背中は、熱を持ってジンジンと痛んだ。
きっと赤い手形がついているに違いない。
「そこでだ。物が駄目なら、人ならどうだ」
「人?人ってなんだ」
「ずばり『お母さん』だ」
親指を立てて自慢げに宣言した言葉に、首を傾げた。
「はあ?」
「小さい頃両親に死なれてしまったイルカ先生は、きっとお母さんに会いたいはずだ」
そりゃあ会いたいかもしれない。
死んでしまった親に一度でも会いたいと願わない子供などいようか。
だからといって、それとこれとは話は別だ。
「どうするつもりだ。穢土再生でもやるのか?」
別に聞きたいわけではない。
聞きたいわけではないのだが。
ああ、駄目だ。奴から聞け聞けオーラが!
「なーに言ってんだ!俺が『お母さん』になるに決まってんだろ。『お母さん』だとイルカ先生に抱きついてもらえるんだぞ!きっと」
中身がお前とわかってて抱きつくか。
どうやら贈り物の相談などではなく、自分が考えたそれが如何に素晴らしいかを自慢したいだけのようだ。
迷惑な話だ。
「穢土再生なんかしたら、そっちに抱きつかれちゃうじゃないか!抱きつかれていいのは俺だけだ。この世で俺オンリーなんだよ!」
それは誰が決めたんだ。
「やめろ」
「なんでだよ」
「『お母さん』は間違っても男じゃねぇんだよ」
「任せてくれ。俺は千の術をコピーした男だぞ!
ラミパスラミパスルルルルル。アダルトタッチで『イルカ先生のお母さん』になぁれ〜〜」
そんなお母さん、嫌だろ。
っていうか、その呪文は何。
止める暇もなく、どこから出したのかよくわからない手鏡に向かってすでに叫んでいた。
ぼふんと辺りを覆った雲が、晴れてきた時に見たものは。
たしかに優しい感じの女性だった。
長い黒髪で、エプロンをつけた母親そのもの。
しかし、いかんせん元の姿を知る人間にとっては胡散臭いことこの上なかった。
「完璧だ」
キラーンと輝いた顔に、もうどうすることもできない。
「なんだ、その術は」
「よく知らないけど、鏡に向かって呪文を唱えるんだよ。そうしたら望む姿になれるって寸法だ」
「変化の術でいいじゃないか」
「でもチャクラも感じられなくなるから、こっちの方が都合がいい」
「都合がいいって何の」
「俺のチャクラだってわかったら、抱きついてもらえないだろ!」
一応自覚はあるわけだ。
チャクラも抑えてあるし、顔などもきっと母親のものなのだろう。
が、しかし。
「だいだい、どうやって『母親』を贈り物にできるんだ。死んだ人間が目の前にいたら不審に思われるだろ。『はたけカカシより』ってタスキでも掛けておくんか」
「そこでお前に相談なんだけどさ」
どこからどう見ても女性の口からカカシの口調で言葉が語られるのは、かなりの違和感がある。
「いかにして不審がられないかを研究して、事前に計画を練っておきたいんだ」
「なるほど。で?」
「そこで予行練習として、お前がイルカ先生に変化してくれ」
「やだよ」
もちろん即答だ。


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