【好きの理由・後編】

これから、きちんとカカシ先生を好きな理由を述べなくてはならない。この一週間考え続けた答えを。
そう考えるだけで心臓の音がうるさいくらい血が駆けめぐっている。
でも、答えなければ何も始まらない。わかってもらえない。
だから。思い切って口を開いた。
「なんとなく、です」
「はい!?」
カカシ先生が素っ頓狂な声を上げる。
「好きな理由は『なんとなく』です」
結局、明確な理由は見つからなかった。
どれが理由でもしっくりこない気がする。だから『なんとなく』。
なんの理由もなくなんとなく好きというのが、きっといちばん好きということじゃないか?
『優しいところが好き』とか『顔が好き』とかいうのは、それが無くなってしまったら嫌いになるってこと。
だから好きなところが言えない好きの方が好きってこと。
ただそこに存在するだけで好きだから。
それが俺の答えです。
そう説明すると、カカシ先生はようやく微笑んだ。久しぶりに見た笑顔のような気がする。
「なんかイルカ先生らしい答えだ」
「わかってもらえましたか!」
「じゃあ……イルカ先生はもしかして、本当に俺のことが好きなんですか?」
「まだ疑ってるんですか?」
やっぱり信じてもらえないんだ。一生懸命答えを考えたけれど、信じてもらうには至らなかった。
でもそうだよなぁ。もし自分だったらあの答えで納得できるかどうかなんて自信がない。
でも仕方がない。こんな風にしか言うことができないのが俺という人間なのだから。
「俺はカカシ先生のことが好きなんです。前にもきちんと言いましたよね?」
「うわー、信じられない」
カカシ先生は小さく呟いた。
覚悟はしていたけど、やっぱり面と向かって言われると辛い。
それが顔に出てしまったのか、カカシ先生がこちらを向き、俺の目を見つめて言った。
「あの、誤解しないでくださいね」
誤解って何がだろう。
「俺がね、好きな理由がどうしても知りたかったのは、嫌われたくなかったからです」
「え?」
「本当はずっと前から好きでした」
「えええっ?」
「たぶんイルカ先生が好きになってくれるずっと前からだっていう自信があります」
なんかとんでもないことを聞いたような気がする。
「イルカ先生は知らなかっただろうけど、俺は前からあなたのことを知ってたんですよ」


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