【恋のアタック大作戦】

一周年記念リクエスト大会
槿花さまリク「アイドルイルカ先生を懸想するヘタレカカシ先生。悪友上忍ズのおもしろ半分な協力は裏目に出てばかりだったが最後には無事イルカ先生ゲット!」


上忍達が集まる控え室、別名上忍サロン。
そこには今日も下忍を担当する教官達が、任務の終わった後にたむろっていた。
「どうした、カカシぃ。元気がないな!」
さきほどから、はぁーと溜め息をついてばかりのカカシに、ガイが声をかけた。
「ホント。鬱陶しいからやめてよね」
「ウザってぇ」
紅やアスマはどちらかといえば不快そうにあしらう。
「お前ら、なんて友達甲斐のない奴らだ。大切な友人が恋の悩みに苦しんでいるというのに!」
カカシの発言に、三人は驚いた。
「へぇ、お前がねぇ」
「えっ、なになに。恋の悩みだなんて私達に相談しなさいよ!」
「青春だな!」
珍しいこともあるものだ。
今までの短くない付き合いで、恋愛の話など聞いたことのないカカシからそんな言葉を聞こうとは。
「どんな人なのよ」
「うーん。つぶらな瞳が可愛くってさ、その笑顔を見るだけで心が安まるっていうか。ともかく可愛い人なんだよ!鈍いところも可愛いっていうか。それに長い黒髪がふさふさ柔らかそうで触ってみたいんだよねー。それからそれから…」
延々と続きそうな誉め言葉に、聞いてしまったことを少し後悔した。
「や、もういい。聞きたくない」
「えー、なんでだよ。こっからがいいところなのに…」
せっかく語って聞かせようとしていた話の腰を折られて、カカシは不満そうに口を尖らせる。
このまま黙って聞いていれば、三日三晩寝る間もなく語られ続けるのは必死だ。
そう判断した上忍達は、せめて少しだけでも話題を修正したいと望んだ。
「それよりも、悩みっていうからには何かあるんでしょう?」
「……うーん、まあね」
延々あれを聞き続けるくらいなら、そっちを聞いた方がマシだ!と全員が思ったが、果たしてそれは正しかっただろうか。
「相談に乗るぞ、カカシ!」
「実は今まで告白なんてしたことないから、どうやって自分の存在をアピールしていいのかわからないんだよね…」
「うーん、私だったら美味しい団子貰うのが一番いい」
「アンコ?」
いきなり会話に加わってきたのは、特別上忍のアンコだった。同じく特別上忍のエビスと一緒にそこに立っている。
「どうしたの、こんなところで」
「火影様に呼び出し食らっちゃってさー。その帰り」
「私は呼び出しではありませんぞ。報告があってちょうど退出が彼女と同じになっただけです」
「あー、はいはい」
誰も聞いていないことを律儀に言い訳するのは、エビスの性格だ。
みな慣れているのか、いいかげんな返事で応対する。
「それより、面白そうな話してるじゃない!私は絶対団子だって」
「そうねぇ、私は宝石かしら」
「お前らの意見じゃ、あんまり参考にならないよ。そういう人じゃないんだもん。そんな欲丸出しなのじゃなくて、もっとこう…なんかさぁ…」
アンコや紅の意見に、カカシは渋い顔をした。
別に金を惜しんでいるわけではなく、それが有効な手段とはとても思えなかったからだ。
そこへ意外にもエビスが口を出した。
「やはり好きな人にはラブレターが定石です。あなたの想いを綴った詩を添えてみては?」
「それだぁ!さすが特別上忍、言うことが違う!」
「まぁ、頑張ってください」
エビスは、自分にできる助言はこれぐらいだ、と言い置いて去っていった。
それからカカシはいそいそと何処からか紙を用意してきて、頭をひねりだした。
それを見ていた上忍達は。
「さすが特別上忍。今どき詩をもらって喜ぶ女がいるとは思えんがな」
「ホントにね」
「そうか?エビスの奴も意外といいこと言うじゃないか!」
「ちょっと私の意見を無視するなんてムカつく!邪魔してやるわ」
「やめときなさいよ、アンコ」
「いーや、絶対ぶっ壊す」
書いては丸め、丸めては書くという書き損じのゴミの山。
そこに鼻息も荒く近づいてきたアンコに、カカシはうろんな目を向けた。
「ねぇ、この『私』を『オレ様』に変えた方がよくない?男らしさが出てカッコイイと思うけど」
「そうかぁ?」
「そうそう」
普通信じるか?というような意見を、詩など書き慣れないため信じてしまったようだ。
それからさぁ、と善意に見せかけて次々と繰り出される助言を元に、カカシの詩は完成した。


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