【閉じこめられた記憶の行方・前編】


カカシがイルカに初めて会ったのは、7班の下忍合格を決めて里へ帰ってきた時だった。
「初めまして、カカシ先生。俺はナルト達のアカデミーの担任だったうみのイルカと言います」
「初めまして、イルカ先生。ナルトからいろいろ聞いたので、初対面って感じがしないけど」
「えっ!?ナ、ナルト…何言ったんだ!」
顔を赤くしておろおろしながらナルトを叱る中忍にカカシは好感を持った。
「俺は下忍の担当は初めてなのでいろいろ教えてくださいね、イルカ先生」
「こ、こちらこそ!」
その日はそんな会話をして別れた。


そして翌日。
「あ、イルカせんせぇー!」
「ナルト!これから任務か?」
「おう、がんばるってばよ!」
「おはようございます、イルカ先生」
「おはようございます。えーと、カカシ先生ですよね」
「はい?そーですが…」
「初めまして、うみのイルカです。ナルト達のこと、宜しくお願いします」
「は?」
「イルカ先生、何言ってるんだってば。昨日カカシ先生に会ったじゃん!」
「え?俺は会ってないぞ」
「…あの、昨日挨拶しましたよ?」
「え?…でもそんな覚えは…」
どうやら本気で覚えていないらしい。
忙しくて忘れたのかもしれない。
「じゃあ、もう一回自己紹介しときますね」
その時はまだカカシも笑ってそう言えた。


だが、しかし。
次の日もその次の日も。
イルカはカカシに会えば『初めまして』と挨拶するのだった。


「なんだよ、アレ。俺、なんかしたか!?」
7班の任務が終わって報告書を提出し、またしても『初めまして』と挨拶されたカカシ。
丁度アスマと会って愚痴ってはみたが。
巫山戯ているのか、と疑ったときもあったがどうやらそうではないらしい。
本人も自覚がなく対処のしようがない。それをとやかく責めるというのも大人げない。
理性ではそう思うものの、感情はついてこない。
忘れられるのはカカシだけなのだ。他の人が忘れられたことは一度もない。
どうして自分だけが。
考えはじめると胸がジクジクと痛み出す。
最近ではもう持病のようになってしまった胸の痛み。
「……なんかしたんじゃねーの、お前」
「そんなわけないだろ。この前初めてあった人間に」
「いや、わからんぞ。お前が知らないうちに何かやったのかもしれん」
「そんなことはない。もうほっとけよ」
「ほっとけるかよ親友」
「どーせ野次馬だろ」
「まーネ」
「死ね」
あー、そーとー煮詰まってるな。
アスマは心の中で呟いて、ため息をついた。
「…もっと接する機会を増やしてみたらどうだ?」
「あ?」
「つまり、もっと親しくなればなんか変化するかもしれんだろ」
「…………」
そう言われてカカシは少し考えてみた。
なるほど、そう言われてみればそうかもしれない。
もっと印象深くなれば記憶にも残るかも。
少しだけ胸の痛みが晴れたような気がした。
そうなると途端にイルカに会いたくなる。
「まあ、気長に頑張れや」

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