飯?風呂?俺? 「ただい…」 ま、を言うことができなかったのは、不覚にも一瞬呆気にとられたからだった。 「おかえりなさいカカシさん。ご飯にします?お風呂にします?それとも、俺?」 珍しく玄関までイルカが迎えに来ていた。それはいい。いや呆気にとられたのはそのことも含むが、それだけではない。 彼はにっこり微笑んで片手にスポンジ、片手にフライパンを持っていた。 一体これから奴は何をしようとしているのか推測をたててみる。 全然分からない。 「…イルカせん、」 「選んでください」 「あのー」 「3択です」 だめだなんかもう、完全なる無視だ。 これが初めてではないけれど(むしろ頻繁に起こるけど)時々イルカはびっくりするほど心が狭く、また何を言ったって引かないほど頑固で完全シャットアウト状態の暴君になる。つまり物凄く「俺様」だ。 こういうときは何も言わずに従うに限るので、はい、と返事をする。 「飯か。風呂か。…俺か。」 ごくりと生唾を飲んだ。 このうみのイルカという男が一筋縄でいくわけはないのだ。絶対に深い意味が隠されているに違いなかった。もし彼が普通の男ならば間違いなくカカシは「お・ま・え」とイルカの鼻をちょんと人差し指で叩いただろう。 三択。確立は三分の一だ。 だがどうする?すべて外れなら… 「………い、イルカ先生で」 ゴトン!! 言ったとたんイルカは持っていたスポンジとフライパン(なんてことするんだ!)を床に落とし、目を細め、ああじゃあ早くこっち来れば?という目で廊下を抜けて狭いリビングにあぐらをかいた。 あのー。 「…何してんですか? 早く」 「いやあの」 「いいから早くこっち来てちゃっちゃと仕事してくれませんか!締め切りは明日の8時半なんですよ、どうしてもっと前もってこつこつやっておかなかったんですか!はいこれカカシさんのペンと判子、朱肉はあんまりつけすぎないように!」 …え、俺なんで今怒られてんの? 終? |