ふと目を覚ますと、まだ起きるには早い時間だった。
それなのに目を覚ましたのは…
にゃあー。
猫の鳴き声。
隣に寝ている人を起こさないよう気を使いながら、布団から抜け出す。
窓を開けると軒下に猫の姿があった。
「なんだオマエ。捨て猫か?…それとも迷い猫?」
猫は震えていた。
「寒いのか」
みゃう、と鳴く声。
窓から身を乗り出して、子猫を抱き上げる。
小刻みに震える小さな黒い塊はすっぽりと手の中に収まった。
やはり寒いのだろう。
俺は昔から体温が低いから、きっと役に立たない。
今手の中にいる猫の方が暖かいくらいだ。
「入れ。この人の側なら暖かいはずだ」
布団をめくってその上に降ろしてやると。
案の定、猫は温もりを求めてヨタヨタと眠り人にすり寄っていく。
その姿は何かを彷彿としてやまない。
ようやくたどり着いたその場所はきっと何にも勝る楽園だろう。
俺は暖かい体温を猫ごと抱きしめて安堵のため息をつく。
これからは寒さに凍えて死ぬことはない。
この猫も。俺も。
幸せを抱きしめてウトウトと眠りについた、ある冬の朝の出来事。
END
2001.11.23 |