「やぁだ。カカシ先生ったら思い出し笑い。やらしいんだから!」
サクラの声でハッと我に返った。
すっかりここが甘味処だということを忘れていた。
「うんうん、そうだな。大人はやらしいねぇ」
そう言葉を返すと、サクラはちょっとムッとしたように唇を突き出した。同調してやったというのに、年頃の女の子という生き物はよくわからないね。
「おばちゃん。団子持ち帰り、一人前お願い」
店の奥に声をかけると「はいはい」と返事があった。会計の時にはもう出来上がってくるだろう。
「カカシ先生はムッツリスケベー。ししし」
などと言っているナルトの頬をひっぱると、痛い痛いと騒ぎ出す。
やれやれ、と溜息をついて立ち上がった。
「さ。お前ら、もう食っただろ。帰るぞ」
「ねぇねぇ。持ち帰ってどうするんだってばよ。家に帰ってまだ食べんの?」
「いや。お土産お土産」
「えーっ、誰にだってばよ!」
大声を出すナルトの脇腹をサスケがこづき、
「ウスラトンカチ、お前は黙ってろ」
と言い捨てた。
騒ぎ出そうとする口をサクラが押さえ、ナルトはモゴモゴと意味不明な音を出している。
チームワークもなかなかよくなってきたじゃないかと思いながら、会計をすませて団子を受け取った。
「お前らもとっとと帰んなさい」
店を出てからそう言うと、素直に
「はーい」
と返事が戻ってくる。
それさえ聞けばもう今日は終わりだ。後は子供たちのことは見ずに走り出した。
手にしている団子を潰さない程度にぎゅっと抱きしめて受付所へ向かう。
今日はたしか早番だったから、7班の任務報告を書いて提出するころには、あの人も受付交代の時間になるはずだ。そうすれば一緒に帰れる。
帰りに桜並木を通っていくのもいいかもしれない。風に揺れてはらはらと落花する中を歩くのは楽しそうだ。ちょうど団子もあることだし誘ってみよう。そういうのが好きなあの人のことだから、きっと喜ぶだろう。顔をほころばせるのが目に浮かぶようだ。
そう思うと動かす足にますます力が入り、足取りも軽かった。
草木も芽吹く春の訪れ。
花咲く春を夢見る忍びはいつだって恋い焦がれている。
萌え出づる春を。
愛しい人と過ごせる時間を。
END
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2004.04.24 |