そこで俺はイルカを捕まえて、昨日湧いた疑問を聞いてみることにした。もしかして、あの風水はイルカが教えたんじゃないか、と。そうでなければあの態度は今までから考えるとどう見てもおかしい。
案の定返ってきた答えは、肯定だった。
「だってねぇ、腐っても上忍。元暗部のエリートで顔もよしとなれば、くノ一だって放っておかないんですよ。たとえ男の恋人がいてもね。だから」
腐ってるのか。まあ、たしかにある意味腐っていると言えなくもないのだが。
今のイルカの状況からすれば、思わず出たその言葉も妙に説得力があった。
「そりゃあ、カカシ先生がバレンタインにチョコをもらったからといって、浮気するなんて考えにくいですけど。でも念には念を入れて、ですよ。あんなピンクずくめの男にチョコを渡そうなんて勇気のある女性はなかなかいないですからね」
イルカはにこやかに笑いながらそう言った。
「ピンクは浮気防止。風水はよく効きますよ、アスマ先生」
たしかに効き目はあったようだ。恐ろしいほどに。あれでは女どころか男だって近寄りたくはないだろう。
しかし、あれは別に風水でもなんでもないんじゃないのか。そう言いかけてやめた。
深く関わらないためには、口は慎むに限る。
しかし。
「お前にゃ悪いが、あんな馬鹿のどこがいいのか理解に苦しむ」
常日頃のカカシを思い浮かべて、ついそう言ってしまった。さすがにまずかったかとちらりとイルカを窺った。普通なら恋人を悪く言われれば気分を害するだろうと思ったからだ。
しかしイルカは笑顔のままで、
「馬鹿な子ほど可愛いというか、愛しいというか」
とのたまった。
「なるほどね」
恋愛は奥が深いぜ。俺もまだまだだな。
そう考えている間に大きな声が響き渡った。
「お待たせしましたー!あなたのカカシ、スペシャルスイートバージョンですよv」
それはもう超音速で着替えてきたであろうカカシが、もう目の前にいた。
たしかに普段の忍服に着替えているが、しかし。
「『スイート』って一体どこら辺が……?」
俺の疑問にイルカは、
「たぶんここの辺りが」
と、まだピンク色に染まったままの髪を指差した。
意外と冷静に答えるあたり、イルカもただ者ではない。
指差された部位をどんなに眺めてみても、『スイート』という代物が感じられるとは思えなかった。たとえ他の誰が見たとしても同じことを考えるだろう。
「さすがイルカ先生!俺のことよくわかってる。愛ですね!」
「ふふ。じゃあ、今日仕事が終わってから髪の毛の色を抜きましょうね」
「はあい」
子供のような返事をするカカシを、イルカはよく面倒を見ていると思いながら眺めていた。俺だったら到底ご免だが、どうやらイルカにとってそれはたいして苦にならないことらしい。
破れ鍋に綴じ蓋。そういえばそんな諺もあったかもしれないと、今さらながら思い至った俺だった。
END
●back●
2004.02.14
|