付き合うようになってから初めての恋人の誕生日。
さすが恋人と喜んでもらえるような贈り物がしたい。しかし、今まで贈ったことなどない俺では何にしてよいやら予測も出来ない。
腐れ縁の仲間に聞いてみることにした。
「イルカ先生の誕生日に何を贈ったらいいと思う?」
「さあな」
アスマは我関せず。
「俺も愛用しているこの特製ボディスーツ!はどうだ。修行の時に着ていれば……」
「却下」
ガイの案はろくなもんじゃない。
「本人に聞いてみれば?」
紅の意見はもっともだったが、ここはあっと驚くような喜ぶ物を贈りたいのだ。
そう主張すると、
「じゃあ、お米券かビール券」
とそっけなく言い放つ。
「何それ」
「知らないの? お米やビールと交換できる、いわゆる商品券よ」
「へぇ。でもそれって貰って嬉しいもの?」
「そういや、以前イルカが貰って喜んでたな。お歳暮の時に」
お歳暮というのが何かは知らないが、喜んでいたというのは有力な情報だ。
「じゃあ、それにする!」
「どっちにするの。お米? ビール?」
「うう」
どっちと言われると困る。
イルカ先生はご飯好きだし、ビールも好きだ。どっちがいいとは選べない。
「どっちかと言えば嗜好品のビール? いやでも、ここは家庭的な雰囲気溢れるお米? う〜ん」
悩んでいるところにガイが口を挟む。
「ラーメン券じゃ駄目なのか、カカシよ」
「えっ、ラーメン券っていうのもあるわけ!?」
「最近、一楽で始めたらしいぞ」
「それなら断然ラーメン券じゃないか! いやでも、ラーメンばっかり食べてたら体に悪いからやっぱりお米? ああ〜迷う!」
どれを選んでも、やっぱりあっちにしておけばよかったと後悔しそうだ。究極の三択。
頭が禿げ上がりそうなくらい悩んだが、
「いっそ全種類贈っちゃえば?」
という紅の提案にあっさり解決した。
「そ、そうかぁ! 全種類か」
盲点だった。まさに目から鱗。たしかにそれなら馬券の単勝買いより確実だ。
そうと決まればさっそく買いに行こう!
走り出す寸前。
「言っておくけど、手土産のケーキはちゃんと別に買うのよ!」
あれは贈り物とは別物だからね、と紅の念を押された。
「わかった。ありがとうー!」
当日、イルカ先生は見た瞬間目を輝かせて喜んでくれたけど、買いすぎだと後で怒られた。
喜んだのに叱られるとは納得がいかないが、贈り物は1回につき1品のみときつく言われたのでこれからは守ることにする。
来年は何にしようかなぁ。
2007.05.27初出
2007.05.28再掲/2010.11.11移動
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