公園にぽつんぽつんと置いてあるベンチに座った。
好きな人が握ってきたおにぎりを、公園で二人で分けて食べる。
今まで読んだイチャパラシリーズにもなかったシチュエーションだ。現実は小説よりも素晴らしいってことだな、きっと。
塩味の効いたおにぎりを食べながらそう思った。
「美味しかったです、すっごく!」
ありがとうございます、とお礼を言うと、イルカさんは照れくさそうに鼻を掻いてにこっと笑った。
しかし、またしても腹がぐぅと鳴る。
ああ、なんてかっこわるい!
「あ、ごめんなさい。あれじゃあ少なかったですよね?」
たしかに量は少なかったが、それは一人分を二人で分けたからであって、イルカさんが謝ることではない。
むしろ分けてもらった俺が謝るべきじゃないのか?
というか、イルカさんだって腹減ってるんじゃないのか?
少量だけ腹に入ると、呼び水になるのか腹が活動し始めて更に減ったりするじゃないか。
俺は慌てて脳みそをフル回転させる。
「もしよかったら、ラーメン食べに行きませんか」
ラーメンが好きなのはさっきまでの会話で調査済み。
ナイスアイディア。
これならもう少し一緒にいられる。
「いいですね! 実はこの辺に美味しいラーメン屋があるんですよ」
表情がキラキラと輝いている。
わ、本当にラーメン好きなんだな。
その笑顔に胸がきゅんと高鳴る。
「俺、奢りますよ。おにぎりのお礼に」
「ええっ、悪いですよ。あんな不格好なおにぎりとラーメンじゃ釣り合いません」
「そんなことないですよ。美味しかった! すごくすごく」
「それならいいんですけど……それじゃあ、お言葉に甘えて奢られようかなぁ」
実は健康診断ってけっこう高いですよね、とイルカさんは恥ずかしそうに笑った。
「任せてください!」
少しは心を許してもらえたのかな。今日一日、いや半日一緒にいたから。本当は頼られたのだったらいいなぁ。
そう願いつつ、ラーメン屋へと向かったのだった。
今日は大きな大きな出来事があった。まさに青天の霹靂。
朝起きたときには顔も知らなかった人に、俺は今恋をしている。
まさに人生で指折り数える記念日になることだろう。
ひとめ会ったその日から恋の花咲くこともある。
その恋の花がどうなるかはこれからの自分次第。
綺麗に咲かせて愛の実になる日まで、何日かかってもかまわない。それまで長生きしなくちゃ、と思う俺だった。
END
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2007.04.14 |