その後。
じいさんの方はイルカさんの鶴の一声で黙ったらしい。
まだ直接会ってないが、相当悔しい思いをしているだろう。しかも俺と会わせないよう画策したことが逆に付き合うきっかけになったと聴けば、卒倒もののはずだ。
想像してニヤリと笑みが漏れた。
しかし。
晴れて恋人となったわけではあるのだが。仕事のせいでそうしょっちゅう会えるわけじゃない。
常に共に行動するのは社長であるじいさんで。恋人である俺よりも一緒にいる時間が長いとはどういうことだ。
思わず机の上で拳を握りしめる。
「カカシー、それの目処ついたか?」
「ちょっと休憩したら?」
髭と紅が声をかけてくる。
「俺は決意した」
「何を」
「社長になってイルカさんを俺の秘書にする!」
「…………そりゃまた遠大な計画だな」
そうだ。社長になってイルカさんを秘書にすれば一日一緒にいるのがあたりまえ。夢のような毎日じゃないか。
俺は今までの人生の中で今最高に社長になりたいと願ってる。
「目標があるのはいいことなんじゃない?」
「内容によりけりだろ。……でもまあ、カカシが社長になれば、俺は専務あたりで楽できるからいいかもなぁ」
アスマたちが横でごちゃごちゃ言っていたが、関係ない。俺は、自分自身のためにやり遂げるつもりなのだから。
そこではっと気づいた。
「こんなことしてる場合じゃない! この仕事をさっさと終わらせて、クリスマスプレゼントを買いに行かなくちゃ」
まだ何にするか決めてない。のんびりしていて良い物が売り切れてると困るし。
「まあ、焦ってチョンボするなや」
「わかってるよ」
書類に集中しながら口先だけで返事をすると、向こうも諦めて仕事に戻っていった。
今やってる仕事は面倒なことが多い。
けれどイルカさんも今、この同じビルの中で働いているだろう。
そう思うと、つまらない仕事も楽しく感じられてくる。もちろん一緒にいる時が一番楽しいのだが。
これが終わったら外回りをしながらプレゼントを選んで、イルカさんが帰る前には戻ってきて一緒に帰ろう。この後のささやかな計画を立てて、ペンを握る指に力を込めたのだった。


END
T様に捧げます。
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2008.12.20


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