【17:今、何してた?】

【66:あたしに惚れてるくせに】の続き

誕生日に子守をすることになったカカシとイルカ。
「そうと決まれば俺が見てますよ。イルカ先生は朝食作ってくれてるんでしょ?」
カカシがにこにこと手を差し出して言うので、イルカも不安がまったくないわけではなかったが、断るわけにもいかない。
おそるおそる預けたが、意外と抱き上げる手つきが慣れている。
「俺、昔火影邸にいたナルトに会いに通ってたことがあって。だから子守はけっこう得意なんですよ」
「へぇ。そうだったんですか。それじゃあ安心してお任せします」
疑って悪いことをしたな、とイルカは思いつつ台所へと向かった。
朝食の支度をしていると、赤ん坊のきゃっきゃっと喜ぶ声が聞こえてくる。
カカシにこんな特技があったとは。
意外な一面を知り、イルカはカカシのこれまでの人生に思いを馳せた。知らないことはまだまだたくさんあるだろうが、これからゆっくりと知っていけばいいとも思った。
朝食もできあがったので、イルカはカカシの待つ食卓へと運ぼうとした。
がしかし。そこで目にしたものは……。
想像を絶していた。
「今、何してました?」
イルカがお盆を持ったまま尋ねる。
「え? ちゃんと子守してましたよ」
カカシは悪びれず答える。
「あ…あしで……足でリフティングしてませんでした? 赤ちゃんを!」
「あ〜はい。すごく喜ぶんですよね、これ」
そう言ってカカシは足でぽんと蹴り上げ、赤ん坊は大道芸のようにくるくると回転しながら再びカカシの足の甲に乗っかった。
きゃっきゃっと赤ん坊が喜ぶ。
それではさっきからの歓声はこのせいだったのか。イルカは一瞬沈黙した後、叫んだ。
「まだ首もすわってない赤ちゃんに、なんてことするんですかっ!」
「え〜? だって、喜んでるじゃないですか。ナルトもこれやると大喜びでねぇ」
カカシが訥々と思い出を語り出そうとしたが、イルカは許さなかった。
「そこに正座しなさい!」
「え?」
「正座です!」
「はいっ」
イルカの迫力に負け、カカシはすばやく正座する。
赤ん坊はイルカの左腕に収まり、右腕の拳がカカシの脳天を直撃した。
「いってぇ」
「反省しなさい!」
「なんで叱られてるのかぜんぜん分からないっ」
カカシが痛みに涙を浮かべながら叫ぶ。
それを見て、カカシの生きてきた30年を理解するのは一生無理かもしれない、とイルカは思った。
とりあえず一般人の常識というものをこれから叩き込まなければ、と誓ったカカシの誕生日の出来事。


バッドエンディング・バースディ

[2009.10.24]