【62:甘党だから〜】

【65:早く早く!】からのつづき

「やった! 最後の一個、ギリギリセーフ」
ケーキの箱を手に店を出る。
ありがとうございました〜、と言う店員の声が扉を閉じる前に聞こえた。
本当にショーケースにはそれ一個だけしか残ってなくて、すごい幸運だった。手渡された箱は真っ白で、中を想像するだけでわくわくする。
カカシ先生がどうしても自分が持つと主張するので、家まで持ってもらうことにした。横目で見ると、箱を抱きかかえてキスしそうな勢いだった。
「なんか嬉しそうですね、カカシ先生」
どうせケーキなんて食べないくせに。
「ほら、俺って甘党だから〜」
「初耳です」
そんな冗談まで言うなんて、この機嫌の良さはいったい何なんだろう。
怪訝な視線を向けても、気にした風もなく笑っている。
「だって、ナルトとサスケはサクラん家にお呼ばれでしょ。だから二人きりのクリスマスなんですよ!」
声はうきうきと浮かれていた。
二人きりのクリスマスかぁ。そういえば初めてだったかもしれない。
まさに恋人のためのイベントだったな、と今さらながらに思い至った。たしかに特別な日に一緒にいられるというのは嬉しいものだ。
「俺、ケーキだって食べちゃいますよ〜」
ぷ。
「言ったからには食べてもらいますからね」
「え」
まさか本気で食べる羽目になるとは思っていなかったのだろう。笑顔が少し引きつっていた。
ノルマは半ホール。
食べきるのを見るのが楽しみだと思い、俺も浮かれた気分で家路を急いだ。


Merry Christmas !!

[2005.12.25]