→【26:雪降らないかな?】からのつづき
門を出て家へと向かう途中、突然とカカシ先生が叫んだ。
「あ、そうだ。あそこ!……えーっと、なんていう名前でしたっけ」
皺を寄せた眉間に人差し指を押しつけて、うんうん唸っている。
「どこのことですか?」
「ほら、イルカ先生が好きだって言ってたケーキ屋。さっき前を通ったら、ケーキ残りわずかだって言ってましたよ!」
「えっ。じゃあ、もう売り切れちゃったかな……」
せっかくのクリスマス。ちょっと高めの店だけど絶対美味しいのは知っているから、何か特別なときに買うのを楽しみにしていた。
あそこのスポンジ、口に入れるとほろっと崩れて美味しいんだよなぁ。ああ、予約しておけばよかった。
その後悔が顔に出たのか、カカシ先生が笑った。
「大丈夫。走ればまだ間に合うよ、きっと」
「でも……」
もしかしたら走れば間に合うかもしれない。
でも、任務で疲れて帰ってきた人を走らせたら可哀想じゃないか。
そう思っていたら、突然とカカシ先生が走り出した。
「イルカ先生、急いで!」
立ち止まり、振り返った顔は溢れんばかりの笑顔で。
「早く!早く!」
いつまで経っても動かない俺に焦れたのか、手を取って引っ張られた。
普段なら恥ずかしくて街中を手を繋いで走るだなんてことはするはずがないのに、いつのまにか俺もクリスマス気分で浮かれていたのだろうか。
結局店までそのまま走り通した。
→【62:甘党だから〜】へつづく