任務も終わり、今日もイルカと帰ろうと受付に足を運ぶ。
ふと立ち止まる。
受付所はイルカと報告に来ている上忍の二人だけだった。
よくよく見るとその野郎はイルカの手を握って何かを言っているのだ!
耳を澄ませて聞いてみると、どうやらイルカを口説いているらしい。
おのれ、よくも人の妻に!この野郎、死にたいか。
「なあ、いいだろう?イルカ。今日飲みに行こうぜ」
「あの……すみません。今日はちょっと…」
「えー!いいじゃないか。恋人いないんだろ?」
「あの、恋人はいませんけど……」
恋人はいなくても夫はいるんだよ!
上忍の地位を利用して無理矢理誘おうなんて、この腐れ外道が。
ああっ!ちょっと待て!!
なに腰に手を回してんだ!汚い手で触ってんじゃねーよ!!
バンッ。
勢いをつけて戸を開くと、ビクリとして手を離す。
この程度で手を離すぐらいなら最初から触るな!
「ああ、はたけさんか。びっくりさせないでくださいよ」
上忍といっても下の下じゃないか、こいつ。くだらん男め。
少し睨みをきかせてやると急用ができたなどと呟いて、慌てふためいて出ていった。
まったく油断も隙もない。
「カカシ先生」
イルカの頬は朱に染まり、目も潤んでいた。
あー、そんな顔しちゃったら襲われちゃうでしょーが。ホントにこの人はもう。
「ふーん。イルカ先生は恋人いないんだ」
「えっ」
「恋人、いないんでしょ」
「あのっ、あれは、その……」
オロオロと言い訳を探しているようだった。
「じゃあ俺帰ります。コレ、報告書」
「えっ。カカシ先生!」
さっさと受付所を出て、一人で帰ってきてしまった。
イルカは追いかけようとしていたが、別の人間が報告書を出しに来たのでそれもままならないようだった。
一人で帰る家への道のりは、思ったより長く遠かった。
少し後悔していた。
くだらないやきもちのために一人で帰るだなんて。馬鹿らしい。


●next●
●back●


●Menu●