ふと覚醒する感覚があって、ようやく今まで自分は眠っていたことに気づいた。
うっすらと目を開けると、そこはいつも馴染んでいるイルカ先生の部屋だった。
そういえば任務でかなり酷い怪我をしたのだったと思い出して、どうやって帰ってきたのかと頭を巡らせたが思い出せなかった。里に着いた時点でぷっつりと記憶が途切れている。おかしい。
ともかく帰ってきたのだからいいかと思い直し、肝心のイルカ先生は、と目で探し始める。
どうやら台所にいる気配がして、それじゃあさっそく愛しい人の顔を拝まねば、と起きあがろうとして気づいた。
腕も足も伸縮性のある謎の紐でベッドに括りつけられている。
「あれ?」
なんだ、これは。
紐は寝ている分には余裕があるが、起きあがれるほどの長さはない。
思いっきり伸ばしてみようとしたら、腹の傷が痛んだ。
「いてて」
引っ張っても切れそうになかった。チャクラを練って切ろうとしたら、チャクラ切れで駄目だった。
「どーしよー、これ」
このままじゃ起きあがれない、と考えていたら、人が近づいてくる気配がする。
「カカシ先生、目が覚めましたか?」
「あっ、イルカ先生〜」
ようやく会えた俺の恋人。顔を見るのは久々な気がする。
会えてよかった。やっぱりいいなぁ。イルカ先生の側が一番幸せだ、としみじみ思った。
それにしてもなんでベッドに括りつけられているんだろう。
「これからカカシ先生、あなたを監禁します」
「はい?」
なんて言った?
「だから、大人しく言うこと聞いてくださいね」
にっこりと笑うイルカ先生。
よく状況がつかめなくて呆然だ。
何?なんでイルカ先生が監禁するわけ?
「あのー……」
起きあがろうとして、体中に痛みが走った。
「いっ」
非常に痛いが、ここで痛いと騒ぐのも恋人への手前かっこわるい。かろうじて呻くだけで止めておいた。
しかし、イルカ先生は顔色を変えて言った。
「駄目です!カカシ先生は監禁されているんだから、俺の許可なく動いたらいけません!」
「はぁ、動くのも駄目なんですか」
「そうです。食事も俺が運んできたものだけ食べてください」
真剣そのものの表情で言われると、いったいどうしちゃったんだこの人!と心配になった。
「でもイルカ先生は仕事とかありますよね。その間、俺はどうしたら……」
とりあえずイルカ先生の真面目さと優しさに訴えてみる。
しかし。
「俺、一週間休みを取ったので、ずっとここにいても怪しまれませんから」
などと言う。
「一週間ですか」
「はい」
頷くイルカ先生をしばらく見つめた後に、はたと思い至った。
もしかしてこの怪我、全治一週間じゃないか?
いや一週間で全治するのは無理でも、一人で起きあがれるようになるにはそれぐらいかかりそうだ。
なんだ、そういうことか。
きっと病院に入れても俺がイルカ先生がいないと嫌だー、と駄々を捏ねて暴れるのは目に見えているから、火影命令が下ったのかもしれない。
S級任務成功に対する報酬だ。ありがとう、神さま火影さま。
「カカシ先生、聞いてますか?」
「はい、聞いてます」
うきうきと返事をする。
「つまり俺は監禁されたんですね?イルカ先生の言うことを聞かないと駄目なんですね?」
「そうです。わかってもらえましたか!」
イルカ先生は安心してにっこり笑った。
「はいー、よっくわかりました」
怪我が治るまで看病するって素直に言ってくれる人じゃなくても。
大好き。
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