お正月三ケ日。
アカデミーも任務も休みである。日頃着用している制服も着ず、額あてもせず休日を二人でゴロゴロして過ごす。
暇だなぁ、と思いはじめた頃。
「イルカ先生、羽根突きしませんか?」
「え?」
「せっかくのお正月ですし」
カカシが楽しそうに笑いながら、そう誘う。すでに手には羽子板を持っていた。
すごくやりたかったのかな。
苦笑しながら返事をする。
「いいですよ」
そんなことで喜ぶ歳でもないだろうに。
それでもカカシは嬉しそうに笑った。
「いきますよ、カカシ先生」
「はーい」
羽根を羽子板で思いきり打つと、カンッといい音がした。
子供の頃はよくやった羽根突きは、今ではまったくといっていいほどしないものだ。
などと感慨にふけっていたら。
ボテッ。
カカシの打った羽根はここまで飛んでこなかった。
「あ、あれ?おかしいなー。これ、飛びませんよ」
「……カカシ先生。それは表です」
あろうことか羽子板の派手派手しい布飾りのしてある方で打っているのだ。
それで打てると思う方が間違っているのに。
そんなことには一向に気づかない様子。
「普通羽根を打つときは裏でするんですよ」
「ええっ、そうなんですか?」
本当に知らないのだ、きっと。
「はい。もしかして初めてですか?」
「実はそうなんです。そういえばそうですね。他の人がしてるときはいい音がしてました。どうしてだろうと思ってたんです、ずっと」
ずっと。
6歳で中忍ならば、その前からすでに忍びとして修行していたはず。
きっと周りの子供が遊んでいるのを横目に。
「そっかー。長年の謎が解けました」
そんなものは謎でもなんでもない。
遊ぶことを知らないで大きくなった子供。
「それじゃあ、実践ルールでやってみましょうか」
「実践?」
「罰ゲーム付きです」
今ここで遊んだからといって昔のあなたに何かしてあげられるわけじゃないけど。
何もしないよりは何かしたい。
「羽根を落とすと墨で顔に落書きしていいんです」
「へぇ、面白そうですね。それやりましょう」
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