「きゃー、何この倒れている人たちは!?」
外でまだ気絶している傭兵を見て、サクラが叫びました。慌てて家の中に入ってくると、そこには白雪王子が倒れていました。
「わーっ、白雪王子が!」
「なんでこんなことに?」
「例の継母が襲ってきたんじゃないのか?」
床にころりと転がったリンゴを発見し、小人たちは更にショックを受けました。
「ま、まさか毒リンゴ?」
「あり得るな」
「どうして怪しいものを口にしたりしたのかしら……」
「まあ、元から頭悪そうな王子だったが」
「サスケ。それはちょっと言い過ぎだってばよ!」
小人たちは言い合いながらも、だんだんと悲しくなってきました。
家にいても何の役にも立たなかった白雪王子でしたが、小人たちが帰ってきたときに家に灯りを点していてくれていました。食事をしながらその日の出来事を聞いてくれました。ただそこにいるだけで嬉しかったのです。最近では帰ってくるのが楽しみだったのに、と小人たちはポロポロと涙を零し始めました。
次第に泣き声は大きくなっていき、森を通る人間にもその声は届くくらい響き渡ったのでした。
そこへ偶然通りかかった人間がいました。
「どうした?何を泣いているんだい?」
小人たちに優しく声をかけてきたのは、黒檀の木のように黒い髪と瞳を持った王子さまでした。
かくかくしかじかこういう事情だと説明すると、悲しそうに顔を歪めます。
「それは可哀想に……せめて俺のできることといったら、一緒にお墓を作ってあげることぐらいだけど」
そう言って、スコップを担いで外の景色のいいところを選び、汗水流して大きな穴を掘ってくれました。
「ありがとう、イルカ王子」
「ぜったい白雪王子も喜んでるってばよ」
「いい供養だ」
小人たちはこの親切なイルカ王子にとても感謝していました。
「それじゃあ、お墓の穴まで運ぼうか」
四人で白雪王子を運ぼうとしましたが、小人の歩調に合わせるのが難しく、イルカ王子がつまずいて担いでいた白雪王子を落としてしましました。その拍子に、白雪王子ののどから詰まっていたりんごのかけらが出てきたのです。
白雪王子はまた息を吹き返し、
「あれ?ここはどこだ?」
とキョロキョロと辺りを見回しました。
「白雪王子が生き返ったわ!」
「うわー、すっげー!」
「冗談みたいな体質だな」
ナルトとサクラは素直に喜び、憎まれ口を聞いているサスケも実はとても嬉しそうです。
「よかったですね、白雪王子」
イルカ王子がにこにこと話しかけると、白雪王子は眼を見開いてじっと顔を見つめました。
「イルカ王子が墓を掘って埋めようとして身体を取り落としたおかげで生き返ったのよ」
サクラが説明しているのも聞いているのかいないのか、白雪王子はずっと黙ったままです。
しかし、それからがばっと起き上がり、イルカ王子の手をぎゅっと握りました。
「ああ、あなたは俺の運命の人だ!一目惚れです。ぜひ結婚してください!」
「はぁ?」
いきなり意味不明なことを言い出した白雪王子に、そこにいた全員が驚きました。
「俺は男なんですが……」
「大丈夫です。こう見えても細かいことは気にしないタイプですから!」
「いえ、あの……国に帰ればお妃を選ばなくてはいけない身ですし」
「まあまあ。跡継ぎ問題なら、ここにいる小人たちを養子にもらえば済むことですよ」
その言葉を聞いてナルトが眼を輝かせました。
「えっ。それってこれからもずっと一緒に暮らせるってこと?」
サスケとサクラもそわそわとしています。
「俺、白雪王子もイルカ王子も好きだから、すっごい嬉しいってばよ!」
「ナルト……」
素直に喜ぶ姿に、イルカ王子も心が揺れます。
「世界中の誰よりもあなたのことが好きですよー。だからずっと一緒にいてくださいよ。俺のお嫁さんになって。ねぇ?」
一生懸命に強請る白雪王子に、最後にはイルカ王子も根負けしました。
「男の俺でもいいって言うんだったら……」
と答えると、
「じゃあ、墓もあることだし、二人で共白髪を目指しましょうね」
と白雪王子はとても喜びました。
その後、五人で末永く仲良く暮らしたということです。

めでたし、めでたし。


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2003.11.16初出
2008.05.10再掲


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