9月15日。
その日、はたけカカシは朝から浮かれていた。
今日は俺の誕生日。
ああ、もう家に帰るのが楽しみでならない。
イルカ先生がこういう行事が好きなのはすでに子供達で立証済なのだ。
ということは、恋人の俺には特別仕様のプレゼントが待っているに違いない!
期待で胸が躍るとはこのことだ。
「ただいまー、イルカ先生。今日の夕飯なんですかぁ?」
「今日はカレーです。手は洗ってくださいね」
カレー!?なぜに!
カレーが悪いというわけじゃないが、もっと誕生日に相応しい料理ってものがあるんじゃないのか?
もしかしてイルカ先生、今日が何の日だか忘れてるの!?
「今日は特別にあなたのためだけに作ったんですよ」
俺のためだけに!やっぱり覚えててくれたんだ!
「ほ、本当ですか!」
「ええ。カカシ先生の大好きなサンマがたっぷり入ったサンマカレーです」
にっこり。
「え……」
「もちろん大好きな茄子も入ってますから」
安心してくださいね。
優しく諭すように言うイルカ。
その鉄壁の笑顔は崩れることはなかった。
……サ、サンマ茄子カレーですか。
山盛りになったカレーが、ダン!と食卓に叩きつけられた。
お、怒ってるーー!?
理由がわからずおろおろするカカシだったが。
実はカカシは浮かれるあまり、今日の任務が終わった後受付所へ行き「早く帰りましょーよ」とうるさく騒ぎ立てたことをすっかり忘れていた。
ただでさえ受付は混むというのに、そのせいで業務は滞り、イルカは多大な迷惑を被ったのだった。
そのうえ、それを戒めた三代目に向かって「うっせーぞ、じじい」と暴言まで吐いていた。
ようやくそのことを思い出すに至った。
あれを怒っているに違いない。
でも、だってだって……と心の中で呟くが、イルカの笑顔の前ではそれを口にすることは出来なかった。
「うわぁ、すごく美味しそうだなぁ…」
涙を飲み込み、勇気を振り絞ってスプーンを握りしめる。
おそるおそる一口食べてみた。
「……茄子の水っぽさとサンマの脂っこさが渾然一体となって、なんだかすごく……」
「そうですか!美味しいですか!たくさん作ったから、残さず食べてくださいね」
目の前にドンッと置かれた小鍋いっぱいのカレー。
どうやらこれを全部食べなければ、許されないらしい。
よし。昔サバカレーが流行ったくらいだから、サンマカレーだって食って食えないことはない。
任務ではサバイバルもあったから、これぐらいなら何とかなる!
カカシはそう暗示をかけて、カレーを食べ尽くすのに専念した。
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