今日は大好きなイルカ先生の誕生日。
誕生祝いに何を贈ろうか悩んだが、イルカ先生は意外と自分の興味のないものには情け容赦ない人だった。
せっかく贈ったものが捨てられたら、はっきり言って立ち直れない!
かといって、何が欲しいか聞いてしまうのも面白くない。
ってことで、今回は『ビックリさせてなおかつホロリ、カカシスペシャル手料理大作戦☆』だー!
問題があるとすれば、俺が一度も料理をしたことがないってことだが。
包丁を握ったことすらない。
でも大丈夫。
愛の力でなんとかなるさ。
早速スーパーへGO!
『忙しい奥様にぴったり!玉ネギを切って炒めるだけでカンタンに酢豚のできあがり!』
こ、これだ!
スーパーのコーナーにインスタント酢豚が山積みになっていた。
俺は忙しい奥様なんかじゃないが、カンタンにできるのが重要なのだ。
まず一品目はこれに決まり。
一応裏に書いてある作り方を確認しておこうとそのパックをひっくり返した。
『材料:玉ネギ(中)一個』
か、かっこ中ってなんだーーっ!
玉ネギは玉ネギだろう。大きさなんか関係あるかーっ。
いや、待てカカシ。
失敗は許されない。
作り方を無視しては美味しく出来上がらないのだ。
思ったよりも難しい料理というものに戸惑いを感じながら、よろよろと野菜売り場に向かった。
そして、玉ネギの前でしばし佇む。
これは中なのか否か。
確かに大きさの違う玉ネギが2種類ある。
だが、これのどっちが中かなんてことはどうやったらわかるんだ。
小と中なのか、中と大なのか。
もしかしたら大と特大じゃないと誰が断言できるというのだ!
中なんて曖昧な書き方じゃなくて、直径何センチか明記しておけー!
ダラダラと流れる汗は、スーパーの冷房の風をガンガン受けて体温を奪っていく。
こうしていては、いつまで経っても先に進めない。
よし。長年任務で研ぎ澄まされた俺の勘では、これが中だー!
フン、上忍をナメンなよ。
選んだ玉ネギを買い物カゴに入れたことに満足して、鼻息荒く次へと向かった。
あとは、スープとサラダだ。
ちょっとメインが少ない気もするが無理は禁物。
二兎を追うもの一兎も得ず。
あんまり数が増えると完成しない可能性も高い。
でっかいケーキを予約してあるから、足りない分はそれで補えばいいだろう。
お湯に溶かしてとき卵をいれるだけの中華スープの素を選び、再び野菜売り場まで戻ってレタスやキュウリやトマトを選んでレジに並んだときに気づいた。
卵を買ってない。
卵を求めてスーパー内を彷徨う。
どこに置いてあるんだろう。
「ただ今より卵の特売タイムサービスを行います。1パック5円!お一人様1パックと限らせていただきます」
と店内放送がかかった。
今までどこにこんな大量の人が?と疑問に思うほど、近辺は主婦軍団によって埋め尽くされた。
その獲物を狙う殺気。
ム。で、できる……
ここで卵が手に入らなければ計画は台無しだ。
俺のイルカ先生への愛が試されている!?
何に代えても卵を手に入れなくては!
「このままではちとマズイか…」
こんなときにこそ写輪眼!
今使わなくてどうする。
いつもより多く回っております、写輪眼!
するどく研ぎ澄まされた爪にひっかかれ、これでもかというくらいの巨大な肉襦袢のごとき身体にはばまれ。
ようやく卵を手に入れ、再びレジに並ぶ頃には、かつてないほどの疲労に苛まれていた。
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