「イルカ先生。人間は顔だと思いますか?」
「え?」
急にカカシにそう言われてイルカは戸惑った。
今日は受付が終わって帰ろうとしたところに、偶然カカシと会って一緒に歩いているのだ。
「正直に言ってください」
「……実は俺、すごいメンクイなんです。どうしても顔に目がいってしまいますよね」
よっしゃー!
カカシはその答えに拳を握りしめた。
イルカ先生を好きになってしまって告白もままならない自分だが、メンクイというなら可能性はあるかもしれない。
自慢じゃないが顔には自信があるし!
と、世の男どもが聞いたら殺されそうなことを考えていた。
「本当は人間は中身だ、とわかってはいるんですが。つい…」
必死になって言い訳するイルカの姿は微笑ましい。
よし。ここはマスクを取って俺の美貌をアッピール!!
そこですかさず笑顔をふりまいてイルカを見ると。
視線が泳いでいる。
カカシの顔を見て照れているのとも少し違うようだ。
何故か。
「あっ、やっぱり人間中身ですよね!顔なんて関係ないです、ぜんっぜんっ!」
全然、が強調されてないか?
なんなんだ。
訝しげなカカシを前に、イルカは誤魔化すような笑みを浮かべるだけだった。
二人は気まずい雰囲気で黙々と歩き続けた。
「あ、カッコイイですね。あの人」
「え!!どいつですかっ」
思わず口から出てしまったらしく、嬉しそうなイルカ。
カカシは殺気すらみなぎらせてその人物を捜した。
俺よりカッコイイ奴なんてこの里にいたか!?
「やだなぁ、見たら分かるじゃないですか。あの人ですよ」
そこにはどこをどう見ても人並みを大きく下回るブ男がいた。
「……アレですか」
アレがカッコイイってどうゆうことよ。
「はいvあの頬骨の具合といい、エラのはり具合といい、落ち窪んだ眼といい、痘痕の量といい。それから、それから…」
「ははははは」
乾いた笑いが辺りに響いた。
痘痕の量ってなんやねーん!!
ってことは、人間の中身を強調してたのは、俺の顔がヒドイから!?
そうなんですか、イルカ先生!
「イルカ先生。俺の顔ってどう思います?」
「え……人間顔じゃありませんって!」
その間は何ですか。
顔じゃない、と言った時点で俺の顔がヨクナイって明言してるのと同じなんですけど。
木の葉の里で抱かれたい男NO.1のこの俺が!
「それじゃあ、おやすみなさい。カカシ先生」
笑顔で別れを告げるイルカに、カカシは挨拶を返すことなく呆然と立ちつくすのみだった。
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