今日は少し話をするだけ、と思っていたけれど、もっと突っ込んだ話をして確認おきたい。これからもっと協力するためには必要だ。
聞いていいものか迷ったが、ここは思いきって聞いてみよう。
「あのっ。アスマ先生は男同士の恋愛についてどう思いますか?」
突然の問いかけに驚いたのか、質問の内容に驚いたのかは定かではなかったが、アスマ先生は目を見開いて俺を凝視した後ちょっと緊迫した表情になった。
真面目に考えてくれている証拠だ。
こんな突拍子もない質問を真剣に考えるってことは……と思うと嬉しくなる。
「あ〜。そりゃ個人の自由じゃないか? 人それぞれ価値観は違うわけだし。俺はいいと思うけどな」
「そ、そうですか」
「男だからって理由で幸せになれる可能性を駄目にするっていうもの勿体ない話だしな」
「そうですよね!」
さすがアスマ先生、良いことを言う。
よかった! 今日はアスマ先生の考えを確認することが出来て。
感動に打ち震えていると、それに冷水を浴びせられるようなことを言われた。
「でもまあ、生理的に受け付けない人間もいるだろうが……」
今まで肯定的だったのに、初めて否定的なことを言われてショックだった。
「アスマ先生は生理的に受け付けない方ですか?」
「俺か?」
「たとえば自分の友人がそうだったら……」
カカシ先生がアスマ先生に好きと告白したら、どう反応するんだろう。
「いや、俺は別に気にせんよ。……実害がなければな」
実害。
それってやっぱり自分が恋愛対象として見られるのは嫌だという意味だろうか。
さっきまでの嬉しい気持ちが嘘のように萎んでしまった。
あまりにも消沈してしまい、俯いて黙り込む。
「あー。イルカは男同士に抵抗はないのか」
アスマ先生が沈黙に耐えかねたのか、そんなことを聞いてくる。
ここはアスマ先生にわかってもらえるよう頑張らなければ!
「何言ってるんですか、アスマ先生! そんなことに拘るなんて男らしくないですよ」
「そ、そうか?」
「そうですよ!」
きっぱりと断言すると、最初は戸惑っていたアスマ先生も、
「まあ、お前がいいと言うならいいか」
と呆れながらも笑ってくれた。
ちょっとは考え直してくれたみたいで嬉しい。俺の話が少しでも役に立ったのならいいのだけど。
「こう見えても俺だって友人には幸せになってほしいと思ってる。だからイルカもそう思ってるならありがたいよ」
アスマ先生はそう言うと、ちょうど呼び出しに来た事務員に連れられて控室を出て行った。
カカシ先生の幸せを願っている? もちろんだ。
心から幸せになってほしいと思っている。
そうしたらきっと子供みたいに嬉しそうに笑うんだろうと思うからこそ、俺だってこうして頑張っているのだ。
アスマ先生は話を聞くのも嫌、というほどじゃないみたいだし。理解だってある。
生理的に受け付けない人もいるというけど、カカシ先生は男でもぼぉっと見惚れてしまいそうな美形だからきっと大丈夫。
やはり気持ちを伝えなければ何事も始まらない。
カカシ先生が帰ってきたら告白したらどうかと勧めてみよう。
そう考えて、早くカカシ先生が帰ってきますようにと夕焼けを見ながら願ったのだった。


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2007.07.07


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