教え子からの同情をたっぷりと含んだ視線に、少し泣きそうになるイルカだった。
ああ、もう帰りたい。
一人でゆっくりと休みたい。
そうだ、そうしよう!
そんな彼の思いをいったい誰が踏みにじれるだろうか。
「じゃあ俺、帰ります」
「そうですね!早く帰りましょう。今日のご飯は何かなー」
「カカシ先生のご飯はありません」
イルカがにこやかに笑いながら答える。が、眼が笑っていないのは明白だった。
「ええー!ど、どうしてですかっ。俺、なんか気に入らないことしましたか?」
「アナタのすべてが」
「いやー、照れるなぁ」
「何がですか」
「え。だから『俺のすべてが好き』なんでしょ?」
ひくり。
イルカの頬が引きつる。
怒りのあまりカカシを睨み付けようと顔を上げると、そこにはぎゅるぎゅる回る写輪眼が。
この人ホントに回してるよ。
「あの……」
「だって気になるってことは好きってことですよ」
誰が気になると言ったんだ。気にいらないと言ってるのに。
写輪眼を回していて、それでもそんなことをいうか。
「カカシ先生」
「はーい?」
「もしかして写輪眼って、自分の望む通りのことが見えたり聞こえたりするんですか?」
「そうでーす!いやー、イルカ先生さすがです。俺のことをよくわかってらっしゃる!」
「…………」
里の誇る写輪眼が。
こんな、こんな。
涙が滲んで視界がぼやけた。
「どうしましたー?」
「俺、もう写輪眼の方とはお話しできません。今後一切、声もかけないでください」
「ああっ。待ってください、イルカ先生ー!」
もはや聞く耳も持たずに去っていくイルカを追って、カカシも行ってしまった。
そして、その場に取り残された第7班は思った。
写輪眼って、写輪眼って。
というかただ単に『はたけカカシ』があんな風なだけに違いない。
そうでなければ困る。社会的に間違ってる、と。
たとえ写輪眼のせいだろうと、カカシ本人の性格のせいだろうと、この先それに一生付き合っていかなければいけないイルカには、何の意味もない話だったが。
噂では、イルカの家の扉には『写輪眼お断り』の張り紙がしばらく張られていたとか。


END
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2002.02.02


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