【シャリンガン・ショー】


それは、7班の任務がようやく終わり、里へと帰る帰り道のことだった。
ナルトが急に思い出したように、カカシに質問をぶつけてきた。
「写輪眼で人の心が読めるって本当なんか!?」
「本当だ」
「ええーー!!すげぇ!やってみせてよ」
突然のことにサクラはもちろんのこと、サスケも写輪眼の使用方法に興味津々のようで、全身を緊張させて聞き入っていた。
カカシの方も子供達の姿にご満悦のようで、機嫌良く請け負った。
しかもタイミング良く遠方に見えるのは、カカシの最愛のイルカであった。
額あてを取り、写輪眼をさらして準備万端だ。
「ではそこを行くイルカ先生の心を読んでしんぜよう。
ムムッ。
『今日はまだカカシ先生に会ってないなぁ。1日1回は会わないと俺……俺、寂しいです。あーー、でもあんなカッコイイ人が俺の恋人なんて信じられない!!早くお嫁にもらってくれないかなぁ。テヘv』
どうだっ!!」
「「「…………」」」
3人はとっさに言葉が出なかった。
一瞬しんと静まりかえった空気は、いかにも自信満々のカカシの声によって破られる。
「どうした。驚いて声も出ないか、下忍諸君。これぞ写輪眼!」
「なーんだ、ガセかぁ。つまんないってば」
「もしかして写輪眼って脳みそにまで影響あるんじゃ……サスケ君、あんまり写輪眼使っちゃ駄目よ!」
「白昼夢か」
3人の反応にカカシは不満ありありのようだ。
「なんだお前ら、その反応は!せっかく見せてやったっていうのに」
「こいつらがどうかしましたか?何か失礼なことでも?」
近づいてきたイルカが不安げに声をかける。
「ああっイルカ先生、聞いてくださーい。こいつら…」
「カカシ先生の冗談は笑えないんだってば!」
「こら、ナルト。駄目だろ?」
事情もよくわからずナルトをたしなめるイルカ。その数瞬後には後悔するとは知らずに。
サクラから聞かされた事情にしばらく声も出ず、カカシを見つめるしかなかった。
「やだな、先生。そんなに見つめちゃって。はっ、今のイルカ先生の気持ちは『ああ、かっこいいなぁカカシ先生。キスしてくれないかな』でしょう!」
「違います。『海の藻屑となり果てろ』です」
あまりのことに、普段のイルカならば口にするはずもない言葉を吐いていた。
言ってしまった瞬間に『しまった』という後悔の念がありありと見受けられたが。
しかしその後悔も無駄な行動だったといえよう。
「ああっ、そうだったんですか。すみません、俺としたことが。わかりました、任せてください!」
「何がわかったんですか」
「ふふふ、大丈夫ですよ。このはたけカカシ、イルカ先生の希望とあらば『モクズ』と改名して『うみの』家のお婿にはいりますとも!」
「誰がそんなこと言ったんですか!アナタという人は……!」
「えっ、『今すぐ婚姻届を出しに行きましょう』ですって?『好き好きカカシ先生。もうどうにでもして』!?イルカ先生ったらだいたーんv」
次々出てくる言葉に、イルカはもう為す術もなく、ため息をつくしかなかった。
「その自信は一体どこから……」
「俺は常に自信に満ちあふれていまっす」
「……そうですか。あふれすぎて中身が空っぽにならないように気をつけてくださいね」
「大丈夫です!イルカ先生への愛に際限はありませんから」
「そんな話をしているんじゃなくて!」
はーっ、言葉の通じない人と話すのがこんなに辛いなんて。
イルカは心の中で呟いた。
そんな二人を子供達三人は気の毒そうに見ていた。


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