多少の行き違いはあったが、初任務お祝いの夕食会は、おおむね和やかで楽しいものだった。
せめて後片づけだけは、と4人掛かりで食器を洗って拭いて棚に仕舞った。
最後に出されたお茶を飲み干した頃には、もうかなりの時間だった。
「ごちそうさまでしたー」
「美味しかったです」
「イルカ先生、ありがとう」
「お邪魔しました」
それぞれが靴を履いて帰ろうとしたとき。
「送っていくよ」
イルカはそう言って、一緒に外に出てくる。
「ええー、いいってば!子供じゃないんだから」
「そうですよ」
「でも……」
きっと昨日のような輩が、子供達を狙って襲ってこないか心配しているのだ。
家で気を揉むよりは、送っていった方が気が楽だろうと判断したカカシは、助け船を出した。
「でもなー、お前達はイルカ先生の班なんだから、何かあったとき家を知っていないと困るだろー?連絡を密に取るのは忍びの鉄則だぞ」
「そっか!忍びの鉄則かぁ」
へへへ、と嬉しそうに笑う子供。
一人前の忍び扱いがナルト達の心をくすぐるのは計算済だ。
スリーマンセルの三人は、誰の家から寄るのが一番近いか、と相談し始める。
それを見守っていると、
「ありがとうございます」
ひっそりとした声が聞こえた。
「本当は送っていく方が面倒くさいんだから、御礼を言われる筋合いじゃないですよ」
「でも、ありがとうございました」
ふわりと微笑まれると、ああやっぱり可愛い人なんだけどな、とカカシは心の中で呟いた。


「おやすみなさい」
「おやすみ」
「早く寝るんだぞー、サスケ」
結局最後になったサスケを送り終えて、二人は安堵の溜め息をついた。
なにもおかしな人物は近づいてこなかったし、変な視線も感じなかった。
今日は何事もなく終わったのだ。
「それじゃあ、俺はこれで…」
カカシはイルカに挨拶をして、自宅に帰ろうとした。
「待ってください」
イルカに腕を掴まれて、胸が高鳴った。
「カカシ先生の家の前までご一緒してもいいですか?」
「は、はい」
子供達は仕方がないとはいえ、中忍の俺まで送っていくんだ。
つまりそれは、頼りない弱い奴だと思われているのは確実で。
情けないとは思いつつ、それでも一緒に歩けるということに感謝したい気分のカカシだった。


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2002.11.16


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