静かな時間がゆっくりと過ぎていく。
そんな中で、思ったよりも時間がかからないで目当ての部分を探し出すことができたようだ。
しかし、書類を見つめるカカシさんの表情は暗かった。結果は芳しくないらしい。
どう声をかけていいのかわからなくて、俺は途方に暮れる。慰めることもできずに、ただ側に突っ立っているだけだった。
「まだしばらくは戻らないみたいです」
でもありがとう助かりました、と全然嬉しそうじゃない微笑みを浮かべながら礼を言われる。
きっとその人が戻らないと任務に支障が出るのだ。任務がうまくいかなければどうなってしまうんだろう。重要な任務なのだろうから。
「困りましたね。任務は火影さまから直々に仰せつかっているのでしょう?」
「いえ、五代目は関係なくて……」
カカシさんはまだシフト表に気を取られているのか、ぼんやりと答えた。
「五代目!?」
俺の反応にカカシさんはハッと口をつぐむ。言うつもりはなかったのに思わず口をついて出てしまったらしい。
でも聞いた言葉は無視できない内容だった。
「じゃあ、カカシさんの頃にはもう新しい火影さまになっているんですね。よかった!」
「よかった、ですか?」
カカシさんは戸惑うように俺の言葉を繰り返した。
「ええ。だって三代目ったら、早く引退してのんびり余生を送りたいって口癖のように言っておられるから。次の方が決まってよかったです」
「……そうですね」
「五代目はどんな方ですか?三代目が選んだ方なんでしょう?」
俺は嬉しくなって思わず聞いてしまった。
「……イルカ先生、それは内緒です。未来を教えるのは本当はよくないことなんですよ」
カカシさんは優しい口調ではあったけれど、困って顰められた眉はまるで途方に暮れた子供のようにも見えて、聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと思った。
「そうですよね。すみません、軽々しく聞いてしまって」
慌てて謝ると、さらに瞳に哀しみの色が深くなったような気がした。
そんな悲しい思いをさせるくらいなら聞くんじゃなかったと後悔する。どうして自分はこう考え無しなんだろう。
「でもね、覚えておいてくださいね。三代目はいつだって自分の信じる道を選び取っているんだってこと。どうかお願いだから」
「はい、わかりました」
意味はよくわからないけれどちゃんと覚えておかなくては、と心に刻んだ。だってカカシさんはひどく真剣な瞳で訴えていたから。きっと覚えておくべきことなのだと思ったんだ。
俺は本当に何も知らなくて、カカシさんの言葉の意味がわかったのはずっとずっと後のことだったのだけれども。
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2004.12.11 |