【明日の夢を今日夢見る17】


朝、瞼を持ち上げると、目の前にふわふわと銀色のものが漂っていた。
なんだろうと思ったが、寝起きではっきりしない頭では冷静に分析など遠い話だ。
とりあえず掴んでみることにした。そして、たよりない感触のそれを自分の方へひっぱってみる。
「いて」
ぎょっとした。
まさか反応があるとは思っていなかったから、一気に覚醒する。
よく見れば、ひっぱってしまったのは銀色の髪の毛で。つまり焦点が合わないくらい近くに髪の毛があったというわけだ。
思いきりひっぱってしまったのだから痛いのも当たり前。
「ご、ごめんなさいっ」
そういえば昨日から三人で寝ることになったんだった。忘れていた。
もしかして俺の寝相が悪くて迷惑をかけてしまったのかも。そう考えて青ざめた。
慌てて起きあがろうとして、自分の身体が簡単には動かないことに気づいた。
腕枕の上に堂々と俺の頭を乗っけていて、腰にはもう片方の腕が巻き付いて抱きしめられているという体勢だった。
うわっ、なんだこれ。
「ん〜〜、おはようございます」
痛みのせいできっと目が覚めたと思ったのに、まだ寝ぼけているのかとろんとした笑顔で挨拶をされた。
それを見て、あ、これはカカシさんだと確信した。同じ顔でもどこか違う。
「おはようございます、カカシさん。あのー……」
腕をはずして欲しいとお願いしようとしたそのとき。
「何してるんだ!」
「おっと」
瞬間、身体がふわっと浮いて軽々と抱きあげられ、そのまま移動していた。
振り返ると、今までいた場所にはクナイが刺さっていた。もしかしてあれが刺さっていたかと思うとぞっとする。中忍の俺ではきっと避けきれなかった。
「危ないでしょ〜。ねぇ、イルカさん。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
声や状況から判断するに、クナイを投げたのはカカシ先生なのだろう。
朝から鍛錬なのだろうか。さすが上忍、心構えが違う!と感心したが、どうも様子がおかしい。
カカシ先生は布団の上に立ち尽くし、拳を握りしめ震えているように見えた。
「おはようございます。カカシ先生?」
一応挨拶してみたが、耳には入ってないようだ。また睨んでる。
「なんでイルカ先生を抱きしめて眠ってるんだよ、この中年!」
中年って……たしかに年齢的にはそう言ってもおかしくないかもしれないけど、自分に向かって言う言葉としてはどうだろう。いずれは自分がそうなるというのに。それに、昔の自分に言われるなんて精神的ダメージが大きくないだろうか。俺だったら絶対そうだ。
そんなことを考えておろおろしていたが、カカシさんは特に気にした風でもない。
「あー、ごめんごめん。ついいつもの癖でね」
「なんの癖だよっ」
「だって、イルカ先生は俺の恋人だもーん」
「なっ」
カカシさんの冗談を真に受けて固まるカカシ先生。
どうしてカカシさんはそんな誤解を招くようなことを平気で言うんだろう。ちょっと泣きそうになりながら、否定するために首を振った。
「違います!俺が恋人なわけじゃありません!」
「未来のイルカ先生と付き合ってまーす」
カカシさんは同意を促すように、ね?と首を傾げた。
そんな風にされても困る。俺が同意するわけにはいかないじゃないか!俺は未来のイルカじゃないんだから。
カカシ先生の反応が気になってそっと窺うと、眉を顰めていた。
「なんか複雑だ……イルカ先生が恋人になる未来は嬉しいけど、それをこんな風に知らされるのは嫌だし、お前にイチャイチャされるのはもっと嫌だ」
素直に信じてしまってるし。
カカシさんはカカシさんで、わざと顔を近づけたりして、からかうのを楽しんでいるみたいだ。
二人のはたけカカシに挟まれて、どうしてよいやら困り果てるのだった。


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2005.06.11


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