「イルカ先生。あの、一緒に帰りませんか」
「は、はい」
今日もカカシ先生は誘ってくれる。
その事実に戸惑いながらも安堵してしまう。
この前少し気まずくなって、もう誘われなくなるだろうと思っていたから。
何を話していいのか分からなくなって言葉に詰まるのは困る。
でも、一緒に帰ったり話したりできなくなるのはもっと困る気がした。
カカシ先生が急に立ち止まり、少し緊張した面もちでこっちを見ている。
「イルカ先生のこと、好きです。付き合ってください」
そう言われて、眩暈がしてその場にしゃがみ込みそうになった。
えええ!?そんなばかな!
困った。どうしよう。
だって、でも。
「すみません。告白されるのって苦手なんです」
「……そうですか」
カカシ先生のガッカリした顔に胸が痛んだ。
きっと言葉が足りなかったんだ。もっと上手く説明しないと。
カカシ先生が嫌いなわけじゃない。
ただどうしていいのか分からないだけ。
「あの…そうじゃなくて…なんていうか。相手から好きと言われたから好きになるのはイヤなんです。好かれているから好きなのかも、と思うと…それじゃあ、嫌われたら好きじゃなくなるのか、とか思ってしまって。自分の気持ちが分からなくなって、イヤなんです。だから、今までも自分から告白しないとダメ、みたいな思いがあって…」
少しでも自分の気持ちを伝えようとしてみる。
するとカカシ先生の顔がパアッと輝いた。
「いいんです!別に俺はかまいません。好きって言って好きになってもらえるなら、俺はずっと一生好きって言い続けますから。大丈夫ですっ!」
「…カカシ先生」
「イルカ先生、好きです。好きです。愛してます。だから…」
子供みたいに言い続けるカカシ先生。
驚いた。
今までカカシ先生は何かに動揺したり、困ったりしない人だと思っていた。
けれど。
もしそうなら、どうして俺なんかの返事をこの世の終わりのような顔で待っているのだろう。
そんな顔をされたら突き放せるわけない。
断ったりしたらきっと一生夢に見る。
ずっと一生胸が痛むだろう。
結局もうこの人を好きになってしまっている、という確信がある。
だからもういいと思った。
好きと言われる間は好き。
ずっと言ってくれるなら、ずっと好きだろう。
「じゃあ、本当にずっと言い続けてもらわないと困りますよ?」
「はいっ!もちろんです!!」
そんな嬉しそうに笑われた方が困るかもしれない。
と心の奥でそっと思った。


END
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2002.01.12


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