その後、カカシとイルカは付き合っている。
火影公認という素晴らしい札のおかげで親衛隊たちの妨害もなく、幸せを満喫している。
アオイはまた遠方の任務へと赴いたという話だが、カカシが裏から手を回したらしいという噂の真実は定かではない。
もちろんそんな噂はイルカの耳には決して届くことはないだろう。
当のイルカはちょうど見かけたガイを呼び止め、礼を言っていた。
「ガイ先生! この前は相談に乗っていただいてありがとうございました。おかげで無事解決しました」
「ほぉ、それはよかった」
以前とはうって変わった明るい笑顔に、ガイも嬉しそうに頷いた。
「恋人ができたっていうのはただの噂だったみたいで。馬鹿ですね、ちゃんと確かめもしないで」
恥ずかしそうに自分を卑下するイルカに、ガイは慰めるようにポンと肩を叩く。
「イルカ、知っているか」
「なんでしょうか」
「愛は噂や嘘よりはやく走れないんだそうだ。足が遅いんだな」
「足が遅い、のですか」
足が早いか遅いか。高く飛べるか飛べないか。
いかにもガイらしい例えに、イルカは口元が緩む。
「そうだ。でも愛を馬鹿にしちゃあいかん! あれはいつだって強いものだからな。足が遅くとも最後に勝つのは愛に決まってる」
なるほど真理だと思った。ガイが言っている愛が、友情にせよ恋情にせよ。
ガイはいつも物事の本質を見抜く名人なのだ、とイルカは感心する。
「はい、よくわかりました」
「そうか、わかってくれたか!」
ガイはいつものようにまばゆいまでの笑顔を見せた。
そうして忙しいのか「こうしてはおれん」と慌ただしく立ち去ろうとするが、途中まで行きかけて振り返った。
「ああ見えて子供っぽいところもあるからな。カカシのこと、よろしく頼む」
「は、はいっ」
思わず返事をするイルカ。
ガイはニッと笑うと、もう振り返らずに行ってしまう。
それではやはりすべてわかっていたのだと思うと、イルカは居たたまれなさと恥ずかしさで頬を赤く染める。
けれど、もうまもなく見えなくなろうとする後ろ姿に、イルカは大きな声で叫んだ。
「ありがとうございました!」


愛は噂や嘘よりはやく走れない。
いつだって噂や嘘はあっという間に広がって、人の心を惑わす。
でもたとえ遅くたって愛が走り出せば大丈夫。きっと追いつくよ。


END
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2006.12.16


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