「ありがとうございました。カカシ先生に拾ってもらえて助かりました」
「いえ、そんな……」
カカシ先生の頬は赤く染まり、こんなことぐらいで照れるなんて案外可愛い人なんだと思った。
「お世話になりました。また改めて御礼に伺います」
ベッドの上でお辞儀をするのはちょっと難しかったが、気持ちは込めたつもりだ。
「え、イルカ先生?」
「お邪魔しました。もう行かないと」
立ち上がろうとして足の痛みにバランスを崩した。
「無理ですよ、まだ」
ベッドから出ようとした体はあっさりと戻された。
「でも報告もあるし、アカデミーだって放っておくわけには……」
「それだったら俺がちゃんとしておきますから。ゆっくり休んでいてください」
「そんな! これ以上迷惑をかけるわけにはいきません」
危ないところを助けられ、手当までしてもらったというのに。
「全然気にしなくていいんですよ! いつまでもここに居たらいい……その方がいい」
「そういうわけには……」
カカシ先生はとても親切だ。
しかし、丁寧にお断りして早々にこの部屋を辞さなくては。のんびり休んでいるわけにはいかない。
そう言いかけてカカシ先生に遮られる。
「すみませんが、その話はまた後で。実は俺、これから任務へ行かないと」
「あっ、すみません。お世話になった上に邪魔してしまって……」
「今日はここでゆっくり休んでいてください。任務が終わったらすぐ戻ってきますから」
カカシ先生は慌ただしく出かけて行く。
お粥なんて作っていたから時間が無くなったんだ。本当に申し訳なく思う。
一人だけになると、何もないこの部屋はさらに静かになった。
カカシ先生はああ言ってくれたけど、そこまで迷惑をかけるわけにはいかない。
家主の居ない間にこの部屋を出て行くのは少し失礼なことだけど、改めて御礼に来ればいいのだし。
チャクラで足を保護しながらそっと玄関まで歩く。
しかし扉を開くことはできなかった。
「え?」
もちろん鍵が掛かっているのはわかっているつもりだった。だが、内側からなら開かないわけがない。
内鍵を回そうとした瞬間、指先にぴりと痺れが走った。
結界が張ってある?
これを破るにはよほどの知識がないと無理だろう。俺のような中忍では力が足りない。
つまり閉じこめられたということだ。
え、なんで?
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2008.03.01 |