今日もイルカ先生に家へ遊びに行ってもいいですか、と声をかけ了承を貰った。
なんといっても明日は休日。恋人となった俺が行くのは自然の流れだ。
しかし。イルカ先生の家に行くと、まだまだ問題が待っていた。
「カカシ先生、見てください!ほら、サラダ油セット!」
「え」
「商店街の福引きで当たったんです。これでカカシ先生の大好きな天ぷら、たくさん作れますね!」
眩暈がした。
いや、大好きとは一言も!俺は一言も言ってません。
……なんとか逃れる術はないものか。
「でも、一挙に使ってしまったらもったいないですよ。炒め物なら何百回も使えるんですから。ね?」
「カカシ先生……」
イルカ先生はサラダ油セットを胸に抱えて、じっとこちらを見つめてくる。
駄目だった?やっぱり天ぷら嫌いだってバレた?
冷や汗をダラダラと流しながら、引き攣った笑顔で応対した。
「よかった!カカシ先生も節約家なんですね。俺たち、気が合いますね」
にっこりと笑顔を向けられ、気づかれないようホッと安堵の溜息を吐く。
「ええ。なんと言っても恋人同士ですから!」
恋人の部分を強調すると、イルカ先生は恥ずかしそうに頬を染めた。
ああ、やっぱりこの人が好きだ。一緒にいたい。
そのためならば多少の障害など乗り越えてみせよう。
とりあえず明日は休みだから、二人でイチャパラなのも恋人らしくていいなぁ。そう思ってイルカ先生を誘おうとした。
「イルカ先生、明日は……」
「明日はタケノコ狩りです」
「は?」
「今が旬ですから。竹林を廻って、たくさんタケノコを掘ってこないと!気合い入ります」
拳を握りしめ、決意に充ち満ちたイルカ先生。
恋人と過ごすよりも優先される、タケノコ掘りの休日。
つまり俺はタケノコに負けたってこと?
そんなのは嫌だ。
「俺も一緒に行きます」
「ホントですか!」
「ええ」
タケノコ狩りのデートもいいじゃないか。イルカ先生と一緒なのは変わりない。何かの都合で一緒にいられないなら、共にいられるよう努力すればいい。そう思ったからだ。
「楽しみですね。ちなみにタケノコ掘りは朝早くからがベストですから」
「え」
翌日、朝も暗いうちから叩き起こされた。
どうやらタケノコも嫌いになりそうな予感だ。
でも、イルカ先生は嫌いになったりしない。何があっても。
そう思いながら、鍬をふるう俺だった。
END
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2005.05.14 |